相談
『......成程ね。守美子の様子がおかしい、と』
「はい。私もそう思いましたし、凪沙さんも、となるとほぼ確実だと思います」
凪沙と対面した日の夜、結は事の顛末を明に電話する形で伝えていた。
ちなみに、メール等では表現が難しかった為に電話を選択したが、そもそも鳴音に相談するという考えは結の頭には最初からなかった。
決して、鳴音が頼りない訳ではない(結としてはそう思っているだけで、世間一般的には十分頼りない)が、
結の頼れるお姉さんのイメージからの独断と偏見から、明に軍配が上がった。
そもそもの話、明と鳴音は一緒にいる事が多いが、年齢の問題か、将又性格の問題か、鳴音の世話を明がする事が常である。よって結の中では明の方が頼りになるイメージなのだ。(事実、明の方が相談事を聞くのには向いている)
ふと、結の脳裏に昨日のグラジオラスの様子が浮かんだ。
結がBランク認定の話を受けたあの日、訓練室にいた彼女。
ぱっと見でも分かる疲労度。それにも関わらず、結との模擬戦まで行った。
(…………まさ、か)
ほんの少しだけ、心当たりと言うようなものでさえ無い、そんなものに結は思い当たった。
「あ、あのっ、明さん。――普段、守美子さんが訓練室に通うペースって、2日に一回ですよね?」
『……そうね。少なくとも私が魔法少女になった頃からずっとね』
「じゃあ、今日は居ましたか?!」
理由も無く(全く無い訳では無いが、理由らしいものでは無い)、焦燥感に近いものを感じた結。
そんな少女に対する明の返答はというと、
『今日、鳴音と一緒に行った時に会ったわね。……確かめたい事があるなら、明日守美子に時間聞いてみたら?』
今日も居たのだ。
普段隔日で訓練室に通う守美子が。
別に隔日であるのが絶対なのでは無い。特に明等は不定期に近いのだから。
けれど、結が昨日見て、同時に片棒を担いだ守美子のオーバートレーニング。その次の日にもと言うのは昨日の訓練の最後の方の守美子の様子から言って、不可解だ。
と言う事はつまり――
「明さん、多分ですけど、守美子さんは――――」
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「…………焦っている、か……。あの子は良く見てるわね。これじゃあ、相談受けた身としては面目丸潰れもいいところよね」
口の中で転がすように、誰に聞かせる訳でも無い、自身の思考を整理する為の言葉に苦笑せざるを得ない。
何故なら、
「守美子に状況が一番近いのは、私だったのにね……」
守美子が感じているものに、明は覚えがあった。
常日頃から意識せざるを得ないそれは、守美子と同様に明にもある。
それどころか、明の方が付き合いの長い感情。
鳴音と自身を比較した際に嫌でも見えてくるもの。
苦しみを共有する者として、何か守美子に出来ることはあるだろうか。
そこまで考えて、明は自嘲気味に呟く羽目になった。
「…………自分が出来てないんだから、守美子のを解決なんて無理よね」
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