不審 Ⅱ
「ええっと、とりあえず自己紹介からしましょうか……」
「…………」
結構なローテンションで話を切り出したのは、適当に入った喫茶店にて、結の対面に座る女性――格好がヤバい感じの不審人物さんである。
結は誘われる形で店に入り、座ってはいるものの警戒は未だ解いていない。
そのため、下手な事を喋らない様に口数は限界まで削るつもりだ。
そもそも、そんな人物に誘われても付いて行くべきではないのだが、結には魔力操作と魔力放出で何とか出来る驕りがあるので、問題は少ないと判断した。
一度眼前のカップから目を離し、首肯だけを女性に返すことで、続きを促す。
「私は、清水 凪沙。高校2年で、さっき私が物陰からずっと見ていた人の友達です」
「………………」
警戒等を一度忘れたとしても無言になった。
(あの絵面で友達……、なんか信用しにくい…………)
先程の言葉に嘘っぽさは含まれてはいなかった。
その場合、全て本当か、隠すのが上手いのか、何方か一方だ。
結は再度伏せていた目をチラリと、不審人物――凪沙の方へと向ける。
守美子(167cm)よりは低いが十分平均より高い身長。結と比べるのなら、25cmは差があるだろう。
艶やかな黒髪をショートボブにして、(服装を除けば)全体的にスッキリとしている。
ところで、結としては彼女によく似た黒髪を何処かで最近見たような気がしてならない。
何処で見たのかが中々思い出せずにいる結にの様子に、信じられていないと判断した凪沙は次の手を打つ。
「えっと、……ほらこれ」
唐突にスマホを取り出して、数回操作をして画面を結の前に突き出してくる。
段々と調子が戻ってきたのか、口調が崩れて来ている。
「これは……」
写真に写る人物は2人、年齢的には結と同じ位だろう。
そんな2人の顔立ちは見知った守美子と目の前の凪沙に良く似ている。
昔の写真を見せる事で、関係者アピールをしているつもりなのだろう。
「右側が私で、左が友達。一応小学校からの付き合いになるから…………」
それは見れば分かる。結的には守美子との関係は分かったから、もっと他の話すべき事を話してほしい。
結の動かぬ表情を見て、不安になってきたのか凪沙の言葉は尻すぼみになっていく。
その様子に、流石に可哀想になったのか、漸くではあるが結は自身から話を切り出すことにした。
「清水さん、守美子さんを見ていた理由は何ですか? 何かあったんですか?」
「え、信じてくれるの?」
先程までまともに喋りもしなかった結が急に話し出した事に面くらい凪沙。
しかし、出てきた言葉は信じてくれるのかな辺り自分が結の立場だったら信用ならない事は良く分かっているようだ。
「はい。名前と写真の両方で……ですけど」
ファーストコンタクトがかなり悪い為、結の凪沙に対する感情は中々どうにもならない面がある。
だが――
「私は守美子さんから、清水 凪沙というお友達がいる事は聞いていましたし」
「ああ、そうなの? 知ってたのなら言ってくれれば……」
何とも不満げに頬を膨らませる凪沙。
それを落ち着いて、かつ楽しそうに眺める結。
何方が歳上なのだろうか。身長や骨格等からは一目瞭然なのだが。
「まあ、あの、世間話に出てきた位だったので、思い出すのに時間がかかっちゃって……。それに、名前が同じな本当に危ない人だったら、どうするんですか?」
結は、同性同名な2人の人間に未だ会った事が無い。
なので、危険人物の可能性がありながら、ちょっとワクワクしてしまったのは誰にも言えない秘密だ。
「えっと、それで守美子を追いかけていた理由って何だったんですか?」
思い切り逸れた話を戻す。そもそも凪沙の誘いに乗ったのは、それが聞きたいが為だ。
思い出したように、実際された質問を殆ど忘れていたのだろう、凪沙が答える。
「守美子と何日か前に偶々道端で会ったんだけどさ、何か様子がおかしくてね、それとなく聞こうとしても駄目だったんだよね。だから、あんまり良くは無いけど知らずに後悔するよりは良いかなって……」
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。
何かガルライディア以外の話を描きたくなって来ました。
皆さんは読むとしたら、転生ハイファンタジーとローファンタジー(他の魔法少女物or近未来異能バトル)、VRバトルの中では1番どれが気になるでしょうか?




