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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
追憶の母

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不審 Ⅰ

 結は魔法局を訪れた次の日に、街に繰り出していた。

 魔法少女のランクがBになったことで、バス代が驚愕の100%オフ、即ち無料になった事を良いことに、今日は少し遠出してみようと言う魂胆だ。


 傍から見れば、徘徊とでも言うべき行為だが、家に居てもやることが無かった結には街の地理の把握と言う取ってつけた(大事な)理由があるので、無目的にうろうろと歩き回ることを指す徘徊には当てはまらない。


 ――街中に魔物が出た時に、地理が分からないと戦いづらいし......。

 結は脳内で色々と言い訳を考えながら、地図と合わせて散策をする。


「この道は狭いなあ。......あ、でも横の道は広いけど、どうやって誘い込むか、か......」


 下手に誘い込もうとすると、逆に被害が広がりかねない。

 被害は少なければ、少ないほうが良い。

 ただ、狭い道は道で、道路沿いの建物への被害が出やすい。

 何方を取るか非常に悩ましい。


 とは言え、結――ガルライディア的には『貫通(ペネトレート)』のみを使うのなら、道の広さはそう重要では無い。


 道に沿って撃つのなら、建物へのダメージは無し。

 斜めに撃つとしても、『貫通(ペネトレート)』は収束した魔力を通常時よりも多く、そしてより収束させたもう一方の魔力を炸裂させる形で撃ち出す技。

 結局建物に当たり、それを破壊する。


 よってどちらかと言えば、魔物の動きを制限できる為狭い道の方が良い。が、被害だけを見るなら大差ないと言うことになる。

(魔物が建物等を利用し三次元的に動く場合を除く)


 それにしても――


「守美子さんに教えてもらった奴便利だなあ。......難しいけど」


 昨日に守美子から教えてもらった魔力による動体視力の補強法。それを応用した身体の集中強化は町並みの観察にとてもよく役立っていた。

 守美子は動体視力を上げる形で利用することが多いようだが、それは同時に認識能力(しや)を広げる事ができる。


 人間は目に映るもの全てを認識できるわけでは無いとされている。

 無意識的に視覚情報の取捨選択がなされ、必要以外のものは見えているのに、認識できないのだ。

 魔力的な強化は同時に認識できる情報量を引き上げ、普段目に付かないようなものにまで注意が行くようになる。

 ちなみに、魔力での機能の向上を行った際のエネルギー消費量に関しては、強化前と強化後とでは一切変動しない。流石万能エネルギーとさえ言われる魔力。便利なものである。


 また、難しいというのは魔力を一部分に集中させながらも体外へ漏れない様にすることが思いの外困難であったという事である。

 漏れ出た魔力は魔法少女やその才を持つ者以外にも見える。

 見られたら、何事かと思われる事だろう。


 話を戻すと、結は魔力による脳と目(加えてそれらの周辺)の集中強化で細かな街の把握に努めているのだ。



 暫くそのまま道なりに歩いていると、段々と店や民家の数は減っていった。

 マギホンで地図を見ることは出来るので、道に迷うことは無い。

 それでも、結は普段あまり見ることの出来ない光景に大事な用事(遠出の言い訳)も忘れて胸を高鳴らせている。

(元より半ば忘れているが)


「……うん? あれは、守美子さん……?」


 結が1人商店街を過ぎた辺りをを歩いていると、前方に見慣れた人影らしきものを見つけた。

 彼女は一杯に食材が詰められている買い物袋を両手に、けれど微塵もその重量を感じさせない。

 背格好といい、動作の雰囲気や筋力など色々と守美子を思わせる点は多い。


「……でも、あの人は…………?」


 だが、その後ろに電柱に身体を隠す様にして、じっと守美子(らしき人)を見ながら、こそこそと明らかに怪しい動作で彼女に着いていく人がいる。


「うわ……」


 ちらりと見えた不審人物の装いに結は思わず声を漏らす。

 その者は、グレーのパーカーにパンツを履いて、パーカーと同色のキャップにマスク、極め付けにサングラスという中々な格好をしていた。

 なんで通報されないのだろうか。

 また、体付きから女性である事が分かった。


 何ともそれっぽい格好で、皆関わりたくないのか付近に疎にいる人々は、スルーを決め込んでいる。


(ちょっと怖いけど、守美子さん気付いて無いみたいだし……)


 結としても積極的に関わりたくは無いが、

 だからと言って、知り合いを見捨てることは少女には出来ない。


「……あの、ちょっと良い、ですか?」


「――ッ?! ……は、い、……何でしょうか」


 緊張からか少し辿々しくなりながらも、不審な女性に話しかける。

 女性は突然話しかけられたことに驚いた様で肩を一度跳ね上げたのちに結の方を向いた。


「えっと、あの人に何か用事ですか……?」


 守美子の方を示しながら、刺激しない様にゆっくりと結は問う。

 結からの質問を聞いて、何故か自身に集まっている視線を認識して、自分の格好を一瞥する。


「あ、あの、ですね……。私怪しい者じゃ無くってっ……。ええっと、その――」


 怪しさは最早オーバーフロー寸前、彼女はバッと帽子とサングラスを剥ぎ取る。

 其処には盛大にほおを引き攣らせ、真っ青になった顔がある。

 彼女はガタガタと震えながら、結に懇願した。


「――守美子の友達だからっ! 警官はやめて下さい……!」

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。


さて、不審人物の正体とは?!

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