少女の実態
何故だろう、主人公よりキャラが濃くなってしまった。
「しゃあぁぁぁ!!」
咆哮が室内で響き渡る。
幸いなのは雄叫びの主が、魔物ではないことだろう。
ここは、魔法局のシミュレーションルーム。魔法少女の戦闘訓練場である。
雄叫びの主は、純白の着物を靡かせ、二振りの白刃を翻す。
その姿は魔法少女グラジオラスそのもの。
「やあぁぁ!」
右左の順に、袈裟。逆袈裟。切り裂かれた魔物から悲鳴じみた声が漏れる。
少女はまるで意に返さず、手首を返す。
「ぜぇぇあ!」
二刀を交差させ、斬る。
叫び、斬る。この繰り返し。魔物が消滅するまで、三分とかからなかった。
__________
「……と、まぁ、こんな感じです」
魔物を倒し終えたグラジオラスがガルライディアの下に戻ってきた。
ガルライディアの両親はまだ来ていない。魔法の説明の後に始まった魔物の説明の際にせっかくだからと、見せてもらったシミュレーション戦闘。魔物の姿を模したものを相手に戦うといったものだが、そんなことはガルライディアの頭からはすっかり抜け落ちていた。
さっきまでの落ち着いた雰囲気はどこへやら。
グラジオラスはシミュレーションが始まると同時に魔物(偽)に突貫した。
そして、叫び切り裂く。
ガルライディアはそんなグラジオラスを呆然と見つめていた。何か見てはいけないものを見てしまったようなそんな表情をしている。まるで、友達に押し付けられたちょっとエッチな漫画を見た時のような……。
ガルライディアは激しめに頭を振る。今思い出してはダメなのだ。あんな処理に困るもののことは今はどうでもいいのだ。
「ガルライディアさん?聞いていますか?」
ガルライディアはグラジオラスの声に現実に引き戻される。
ガルライディアの耳には、グラジオラスの話など一切届いていなかった。
「ごめんなさい……。もう一度言ってください」
戦闘を見てしまった影響か思わず敬語になってしまうガルライディア。少し引いてしまったことはグラジオラスには口が裂けても言えないだろう。
「ですから、ガルライディアさん。シミュレーション、やってみますか?」
「え?あの……私魔法の使い方、分からないんだけどどうしたら……」
「大丈夫。戦ってれば、自然と出来る様になるので」
「でも……」
「大丈夫ですよ。戦りましょう?ね?」
「ちょ、待って」
捲し立てるグラジオラス。ガルライディアの後ろに周り、肩を押す。
(物理的にも)押されるガルライディア。
「待って、お願いだから、待って?」
「さあ、さあ、さあ、」
(帰りたいよぅ……。)
この瞬間ガルライディアが当初グラジオラスに抱いていた、少々怖い(初っ端から刃物を突きつけてきたので、少々では無さそうだが)けれど、面倒見の良さそうなお姉さんといったようなイメージは粉微塵にされ、戦う時に叫びまくる、年上の怖い人というものに再構成された。
お読みいただきありがとうございます。