収束則 Ⅵ
「ーーッ」
ダイバーに真っ先に狙われたのは、エレク。
狙った理由は分からない。強いて言うなら、グラジオラスは見るからに前衛だから他2人のうちの一方を標的にしたのだろう。
両者の間に立ちふさがり、魔法は間に合わないと判断。即時限界量の魔力を腕と小太刀に纏わせ、
眼前に小太刀を交差させる。
グラジオラスに一瞬遅れて、2人は後退する。
魔法少女の身体能力により、一気に4m程後ろに跳ぶ。
そして、2人も衝撃に備えた。
「グウァ?!」
交差した小太刀にダイバーの右手が叩きつけられる。
少女の口元から漏れる苦悶の声。勢いに押され、たったの一撃で数メートル飛ばされる。
「とんでもないですねっ」
空中でなんとか体勢を立て直し、グラジオラスは悪態をつく。
チラリと、周囲を確認。数人の民間人がいるのを確認した。それも逃げられる状況下で逃げずに、戦闘の様子を見ているものが何人もいる。
「セージ!」
短い言葉。されども、彼女は、彼女たちは要件を完璧に把握。
「『魔を垣間見る』」
セージゲイズが魔法を発動。
『魔を垣間見る』は、他者(生物非生物問わない)の魔力を調べ、特性、量、各部への供給量などを見るための魔法。
魔力量や供給量等は、魔法少女ならば体感でおおよそ把握できるが、セージゲイズのそれはレベルが違う。
とは言え、魔力特性に関しては、ヒントとなるものが必要であるため今は分からない。
暫くは時間稼ぎ兼相手の能力の調査をしなければならない。
「グラジオラス! 時間をくれ」
エレクも魔法の準備を始めた。
バチバチと彼女の杖ーーケラウノスに紫電が奔り出した。
「皆さん、これから此処は戦場になります。いち早く退避を」
声音に微量の魔力を込めて。
少量でも魔力を込める事で音の到達距離を伸ばしつつ、その魔力の少なさ故に魔物などの体表の魔力を突破できない為、民間人(魔力の少ない者)にのみ、聞こえる。
これは魔法ではなく、ただの技術。
けれど、ただの技術と侮れるものではない。
「ふうう......」
息をゆっくりと吐き、集中力を高める。
ダイバーをエレクとセージゲイズからなるべく引き離す為に自ら撃って出ようと、蹴り足に力を込めてーー
「そういや、テメェら名前は」
つい動きを止めてしまった。
ついでに、周辺の空気も止まった。




