収束則 Ⅲ
休日の街中で人が集まりやすい場所といえばどこだろうか。大部分の人々は、駅前かショッピングモールといった所を挙げるだろう。
彼女もそう考え、考えたからこそ、そこに居た。
彼女の装いは、涼しげな白のシャツに膝下までの空色のスカート。小さなバッグを肩から掛けて、石の付いたネックレスをしている。
「久々に来たけど、前と余り変わらないわね。……あの店、始めて見た」
前言撤回が早い。
ただ、店は変わろうとも、雰囲気は当時のまま。
懐かしく思う。2年程前の楽しかったあの頃を。温かな人の笑顔を。繋いだ手の温もりを。
けれど、それらはもう過去の話。
振り返ることはあっても、取り戻す事など出来ないのだ。
それに少女からすれば取り戻す気も無いのだ。
あの日、あの地での誓いがあるから。
「あ……」
微かに漏れる。偶々通り掛かった嘗ての友が気に入っていた店が無くなっていたのだ。
そこには、全く別の店があった。閑散としていた。
まるで、今の自分を示唆する様に。
「まさか、こんなにも未練がましいとはね……」
自分の事は自分でも、否、自分だからこそ分からない。
それでも止まるつもりは無い。
どんなに昔を想おうとも、この胸に燻る憎しみだけは消えてくれないのだから。
「そこの君、1人?良かったら俺と一緒に歩かない?」
声をかけられて、其方を向く。
軽薄そうな男、20歳位だろうか、が彼女をナンパしていた。
彼女の実年齢はともかく、外見は高校生くらいの美少女。
彼が不運だったのは、声を掛けた者がただの人では無かった事だろう。
「はあ……、もう、いいか。やっちゃおう」
水を差されて、抑えが効かなくなった。
だから、彼女は首下のネックレスに魔力を込めた。




