収束則 Ⅱ
マギホンを捨てられなくなってしまった。
それは、良くも悪くも結と魔法少女との繋がりが断たれなくなった事を意味する。
ただ、本人としてはこれで良かったのだろう。ここ数日間で現在程機嫌が良い事はなかった。
夜、寝る直前になって、再びマギホンが何かを受信した。
勉強机の上で振動し、鈍い音を奏でる。
咄嗟に手に取る。守美子か、鳴音か、明か、誰からの連絡だろうか。
だが、現実そう上手くは行かない。
電子メールの差出人は、魔法局魔物対策本部。
街周辺に生息する魔物の監視や魔物の発生、侵入を防ぐための結界の管理などを行っている部署だ。
一瞬で少女の顔は曇る。太陽が隠れるのではなく、曇天といった程に。
気が進まないながらも、殆ど送られてこないところからのメールを確認する。
そこには、結の予想を裏切ることが書かれていた。
<アッシュです。職場の物からの連絡で申し訳ないね。結としてはもう聞きたくないかもしれないかもしれないけど、結の魔力特性『収束』についての調べがついたよ。知りたくなかったら、そのまま放置で良いからね?もし知りたかったら、連絡をください>
まず結が思ったのは、アッシュの所属って魔物対策本部だったんだという、非常にどうでも良いことだった。
そして、正直に言うならば、結は自身の魔力特性についてアッシュに質問したことをすっかり忘れていた。
魔力特性についての話は気にならないといえば、嘘になる。
が、しかし、魔法少女として戦うことを嫌がっているのに聞いてしまったりしたら、そのままずるずると過ぎていってしまうように思うのだった。
「まあ、聞くだけなら......良いよね?」
誰にともなく口に出し、結は話を聞きたい旨を返信した。
そうして、守美子から貰った”温かさ”とアッシュの話に対する好奇心を胸にベッドへと潜り込んだ。
なんやかんや、好奇心が勝り、少し夜ふかしになってしまったことは結以外知らない。
そう結だけが思っている。
時計の針は止まることなく刻み続け、ついに日をまたいだ。




