狭間
短めです。
結の不眠も解消され(結局香織と一週間程同衾した)、結は健康を取り戻した。
ただ、身体を苛む物は無くなろうとも、心は別だ。
「――ッ」
アラートが鳴る。微かに身を縮めるも、無視を決め込む。
「結ちゃん、どうしたの?」
その微かな反応を鋭敏に察知した謡。良く見ている。
「何でもないよ……」
そう誤魔化す結。しかしながら、口ではそう言っても、その雰囲気はまるで違う。
その事を結は自覚しているが、撤回するつもりもない。
そして、そこまでの全てを見透かす謡と陽子。
結としては、気を遣わせて申し訳ないと思っているのだが。
不眠が解消された後も、結が魔法少女として戦う事はなかった。
今までは現実味が無かった。
被害が出ているのは知っていた。
が、知っているだけだった。知識としてしか知らず、理解はしていなかった。
だからこそ、戦えた。
だからこそ、恐怖は少なかった。
だからこそ、力が湧いてきた。
けれども、それは過去の話。
人の死を身近に感じ、体験して、恐怖は対面せずとも湧きつづける。
身体は竦み、呼吸は荒れる。
最早、戦えない。
でも、もう良いんじゃ無いかと思う結もいる。
守美子達なら自分が居なくても、何の問題も無いだろうと。戦えない自分は足手纏いなのだからと。
その均衡は未だ続き、答えは一欠片さえ見えないのだった。




