もう一人の魔法少女
「アッシュ、死体どうしたらいいのかな?」
魔物の討伐が終わり、ガルライディアらが後処理について考えていると、突然
ドンッ!
轟音と共に一人の少女がガルライディアらの前に降り立つ。
彼女はガルライディアよりも身長が高い。160cmを越える、女性の中では高い方だろう。
髪は肩口ほどまでのポニーテールになっている。落ち着いた雰囲気を纏った少女だった。
彼女は白を基調とした着物のようなデザインの服を着ていて、両腰には二振りの小太刀が鞘に収められている。
その出立ちから、魔法少女である事が察せられる。
「こんばんは、私はグラジオラス。魔法局の者です。お名前を教えてください」
登場の仕方とは全く異なり、凛とした声だった。
「私はガルライディア。この子はアッシュです」
この時、ガルライディアは(銃刀法違反?)などと考えていたが、自身の太腿にも違反の象徴がある事を棚上げしているようだ。
「ありがとうございます。では、ガルライディアさん、魔物を討伐したのは貴方ですか?」
「うん。私です」
「そうですか。申し訳ありませんが――」
途端、風が吹き抜けた。
「――魔法局の方までご同行願います」
背後から首もとへ刃を突きつけ、彼女はそう言った。
絵面は完全に脅迫の現場である。
「拒否権とかは……」
「ないと思ってください。魔法少女は魔法局に入る事を義務付けられているわけではありませんが、私は入る事を強く推奨します。なので、ご同行願います」
再度彼女は言う。さっきよりも刃をガルライディアに近づけらがら、
「……はい……」
ガルライディアは渋々と言ったふうに同意を返す。冷や汗でびしょびしょになりながら、
__________
結達が住む街にある魔法局には5分ほどで着いた。魔法少女のスペックで跳んでだが。
「お疲れ様、グラジオラス。後ろの子は?」
警備員がグラジオラスに話し掛ける。警備員は女性らしい。
「只今帰還致しました。彼女は新しい魔法少女です。今回は魔法局についての説明をするため、お連れしました」
グラジオラスは淀みなく答える。
警備員は二人を通した。グラジオラスは受付に向かい、ガルライディアはそれについて歩く。グラジオラスは振り返りつつ、ガルライディアに問いかけた。
「保護者の方は今お家にいらっしゃいますか?いらっしゃるのでしたら、魔法局まで来ていただきたいのですが」
「うん、いるはず。電話すればいいのかな?」
既に夜も更けている。この時間帯なら、両親共いるだろう。
ガルライディアは意識せずして、敬語を外してグラジオラスに問う。
「はい、お願いします」
そうして、ガルライディアは家にいる両親に電話をした。
__________
「保護者の方がいらっしゃったら、魔法局の説明を致しますので、それまでは私の方から魔法についての説明をさせていただきます」
会議室らしき場所にて、グラジオラスによる話が始まる。
「ごめんなさい、その前にいいですか?」
「なんでしょうか?」
「私はまだ魔法局?に入ってないのに、どうして教えようとしてくれるの?」
ガルライディアはグラジオラスの目をじっと見つめる。
「確かに不思議に思われると思います。なので、正直に申しますと、ガルライディアさんには今回のような事が再度起こった際に自衛する力を持っていただきたい、というのが一つ」
グラジオラスは己を見つめる者に視線を合わせ、真摯に向き合う。
「もう一つは?」
一度、グラジオラスは目を伏せる。しかし、直ぐに視線を上げた。
「もう一つは、打算です。私からの説明でガルライディアさんが魔法に興味を持って下さるのなら、魔法局に所属される確率が多少なりともあがりますので……」
「……ああ、成程」
ガルライディアは納得を示す。
「さてっ、説明を再開します」
グラジオラスは気持ちを切り替えるように声を上げる。
「魔法には大抵の魔法少女が共通して使える魔法とその魔法少女にしか扱えない固有の魔法があります。と言っても、全員がそれぞれ固有の魔法を持っている訳ではありません。使えるか否かは個々の魔力特性によります。此処までで何か質問は?」
いきなり知らない情報が満載なガルライディアだが、一つ聞き覚えのある言葉があった。
「じゃあ、魔力特性って何?アッシュもそんな事言ってたんだけど、教えてもらってなくて」
アッシュはガルライディアの特性は『収束』だと言っていた。
「特性とは、言うなれば、個々人で異なる魔力の性質の事です」
グラジオラスはガルライディアの肩に乗ったままのアッシュを一瞥し、説明を始めた。
お読みいただきありがとうございます。
もしよろしければ評価の方宜しくお願いします。