討伐
変身――そう結が叫んだ瞬間、ネックレスの飾りが花を模したような形に変化した。
しかし、変化はネックレスに留まらない。ネックレスの変化で終わったら、戦いようがないので当然と言えば当然なのだが。
まず、結の身体を赤い光が包み、着ていた服がランドセル共々、消滅した。
「え?ちょっと、待って!」
焦る結。だが、結が局部を隠す前に次の変化が起こる。
赤と白で彩られたワンピースが現れた。それに続くように、グローブと靴下とベルトが出現。ベルトには小さな縦長のポーチがいくつか付いている。
(え、これだけじゃないよね⁈)
結の思いが届いたのか、脚にはメカのようなやたらとゴツイブーツが、手首にもゴツイアーマーが、そして、胸部には薄手のプレートアーマーが現れ、最後に両太腿にこれまたゴツい見た目の拳銃がそれぞれ出現する。
変化が止まり、光が弾ける。
同時に結は心に浮かぶままに、己の新たな名を叫ぶ。
「魔法少女 ガルライディア!」
それがこの世界に一人魔法少女が生まれた瞬間だった。
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「結、ああいや、ガルライディア。解析結果が出たよ。君の特性は『収束』。大量の魔力を一気に操る事に特化しているよ」
いつの間に調べていたのか、アッシュは機械を見ながら、ガルライディアにそう伝える。
「特性って?」
「後で!とりあえず今は魔力を一纏めにして攻撃したり出来ると思っておいて!」
「う、うん!」
確かに長々と説明している時間はもう無い。
「此処から、西に500メートル。まだ間に合う!」
アッシュは端的に魔物の場所を伝え、結の肩に飛び乗った。
ガルライディアはそれに従い駆け出す。
走りながらもアッシュの説明は続く。
「自分の中にある魔力は分かる?」
「なんとなくは」
「OK。なら、脚に魔力を集中させて。お願いだから、全部はやめてね?それで、次に開けた場所に出たら――」
途端、運がいいのかガルライディアは開けた場所に出た。
「――集めた魔力をおもいっきり外に押し出して!」
ダンッ!
アッシュの言葉の通りにしながら、強く地面を踏み締める。
瞬間、ガルライディアの身体は冗談のように跳ね上がった。
暫く飛んだ後、民家の屋根に着地する。
「もう一回!」
アッシュの言葉に従いながら、ガルライディアはもはや暗くなりつつある街を翔る。
「「いた!」」
二人(一人と一体)の声が重なる。
ガルライディアは飛び上がり、魔物の近くに降り立つ。
空中で抜いていた拳銃を一丁魔物に向ける。
拳銃に魔力が集まり始める。魔物は動物の本能故か、素早く振り返り、ガルライディアに飛びかかる。
ガルライディアの身体が竦む。けれど、大丈夫。何故か――
「撃って!」
アッシュの声が響き渡る。ガルライディアはその声に押されるように引き金を引いた。
――共に戦ってくれる仲間がいるのだから。
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「お疲れ様。言ったでしょ。大丈夫だって!」
「うん!」
ガルライディア―結は心底嬉しそうにそう返した。
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