近接と名乗り Ⅰ
夏休みを2週間後に控えた週末。
結は魔法局支部にて、守美子と向き合っていた。
正確には、魔法局支部の魔法訓練用の一室にて。
「『変身』」
「『その背を追え』」
互いに一言ずつ。それだけで2人の身体からはそれぞれ、赤と白が溢れ出す。
溢れ出たものは、一瞬の内に散った。
そこには、白地に赤のアクセントのワンピースを纏い、二丁拳銃を手にする少女――ガルライディアと、和風の衣装を純白に染め上げ、小太刀を二振り手に持つ少女――グラジオラスがいる。
2人は、模擬戦を行う為に向かい合っていた。ルールは簡単。降参した方が負け。ただし、グラジオラスは魔法を発動しない。
といっても、魔法少女の衣装自体が魔法ではあるのだが、それは考慮に入れない。
「さあ、始めましょう」
守美子――グラジオラスが二刀を構えた。
ひとつ頷き、ガルライディアを二丁を構える。しかし、こちらはグラジオラスに比べてぎこちない。経験の差が如実に表れている。
ガルライディアが構える様子を見てグラジオラスは、極小さく嘆息する。
(固い。ただ単に慣れの問題もあるだろうけど、これはもっと別の……)
考えながらもグラジオラスは、ガルライディアの下へと駆け出す。
「『散弾』!」
初手からガルライディアは散弾を右の銃から放つ。
グラジオラスは大きく(ガルライディアから見て)左に躱す。
だが、ガルライディアはそれを読んでいた。
左の銃を連射する。左手での射撃は右手に比べ安定しない。
だからこその連射なのだが、当然グラジオラスには通用しない。
グラジオラスは、重心を限界まで低くし、魔力放出と強化された脚力でガルライディアに突っ込んでいく。
グラジオラスの頭上を魔弾が通り抜けていく。
ガルライディアは、慌ててグラジオラスに銃を向ける。
「『爆裂』ッ!」
グラジオラスの前方約50cmの床に魔弾が放たれ、爆風を生む。
それでも、グラジオラスは止まらない。
一切の躊躇なく、爆風を突き抜けた。
「うそっ⁈」
ガルライディアの予想をグラジオラスは容易に超えてきた。
流石に防御の為に脚が止まると思っていたが、それすらしない。
グラジオラスは、身体の前で順手に持った小太刀を交差させ、ガルライディアの懐へと入る。
切り払われる両刀。
ガルライディアは、出来得る限り上体を反らし鋭刃を躱す。
その際、両銃はグラジオラスの腹部を捉えていた。
引き金が引かれ、グラジオラスの動きが止まる。
また、発砲の反動と魔力放出にて、ガルライディアは大きく後ろに下がる。
右の銃のスイッチを切り替える。
ゼロ距離射撃に若干ながら怯んだグラジオラスが、再び突撃を開始。
ガルライディアは、左の銃を構える。
それを見たグラジオラスは、両刀に魔力を込めた。刃が仄かな光を帯びる。
ガルライディアは魔弾を連射し、弾幕を張る。
しかし、
「ハアアアァ!」
咆哮一発。グラジオラスは両刀を翻す。寸断される魔弾。
空いた弾幕の隙間に身体を捻じ込み、なお前へ。
けれど、ガルライディアは右手を、正確には右手の銃をグラジオラスへと向けていた。
その銃には、今までとは一線を画す程の魔力が込められていた。
「『貫通』!」
現時点でのガルライディアの最高火力。
ガルライディアの余剰魔力から形成された魔弾、通称、収束魔弾に今の魔力を上乗せして、放つ貫通力特化魔法。
通常の魔弾を意に返さないグラジオラスだろうと、直撃したらただでは済まない。
そのような状況のなか、グラジオラスは右腕を限界まで引き絞っていた。
読んで頂きありがとうございます。
戦闘シーンは筆が進む進む(描いてて1番楽しい)
修正する度に字数が増える……。




