正体
ラークスパーに連れられ、ガルライディアは大きな会議室、本部でも最も大きい所らしい、に入った。
そこには、沢山の少女がいた。皆、個性的な服装をしており、稀に赤髪やら青髪などの少女もいる。
少女達全員が新たに魔法少女になった者。今月は約60人。少ないように思えるかもしれないが全国規模で一月にと考えると、そう少なくはないのだろう。
そして、皆年頃の娘と言うべきかとても賑わっている。厳密にはお喋りに講じている。
ガルライディアは、適当な場所に座る。
ラークスパーはというと、
「ごめんねー、ちょっと電話してくる」
との事でその場にはいない。
他の付き添いの人々は、そちらはそちらで集まりこれまた会話を楽しんでいる。
孤立無援とはこのことか。
ガルライディアは、1人寂しく集会の開始を待っていた。
ラークスパーが戻り、約3分。
司会の人が現れ、遂に集会が始まった。
集会の最初は、会長の挨拶などだとガルライディアは思っていたのだが、そう言う類のものはなかった。
ガルライディアは割としっかりそういうものを聞くのだが、聞かない者が多いからか省かれているらしい。
最初の予定は、Sランク魔法少女からの激励らしい。
司会の人がその魔法少女の名を読み上げた。
「それでは、アスタークレセントさん。宜しくお願いします」
そこに現れた人物にガルライディアは驚きを隠せなかった。その人物は、先の銀髪の女性。彼女がアスタークレセントだったらしい。
「皆さん、こんにちは。アスタークレセントです」
澄んだ彼女の声はマイク越しとは言え、会議室中によく響いた。
「私から伝えたいことは1つだけ」
彼女は全体を見渡した。ガルライディアと目が合った。彼女はほんの少しだけ笑みを深めたようにガルライディアは感じられた。
「魔法少女を続ける理由は、どんなに小さくても構いません。それが本心から来るものであれば」
「国を、自身と全く関係の無い人々までを、守りたい。そう思える人はとても素晴らしい人だと思います」
そこで、少し言葉を切る。
「けれど、そう思える人は多くはいません。だから、極々個人的な事でいいのです」
魔法局の代表的な立ち位置での発言では無いかもしれませんが、そう言ってウインク1つ。
会議室を拍手が包み込んだ。
「あ、ごめんなさい。もう1個いいですか」
だが、続く言葉で雰囲気をぶち壊した。
「もし、命の危機だったら逃げなさい。壊れた街は直るけど、命は戻って来ない。絶対に」
そう言った彼女は恐ろしい程真剣で、皆が呑まれた。
「これで、本当に終わりです」
彼女が退室するまで、会議室の中にいる人達は何一つとして動く事が無かった。
読んで頂きありがとうございます。
アスタークレセントさんのお話はまた別の機会にでも。




