言葉と英雄と
車にて数時間、魔法局本部に着いた結と亮歩は、車から降りた。
「結ちゃん、本部に行く前に変身しておいてね」
亮歩に言われて、結は首から下げた変身アイテムを取り出した。
「『変身』」
赤い光が溢れ出て、少女の元に集う。
光が収まった時には結は、ワンピースを纏った姿へと変わっていた。
それを見届けると、亮歩も変身する。
「『進め、最果てまで』」
亮歩がそう口に出すと、彼女の身体の周りに灰褐色の光が散らばる。それは、鳥を模していた。灰色の鳥達が彼女の身体に止まる。亮歩が腕を薙ぐと鳥が消え失せた。
彼女は、濃い灰色のフード付きケープを纏っている。
しかし、そのケープの後ろは二分されている。
彼女の腰には、小さな鳥籠らしきものが下げられている。
その鳥籠が亮歩――ラークスパーの魔法具のようだ。
そこまで観察して、ガルライディアは違和感を感じる。
何かがおかしく思えて仕様がないのだ。
今までのことを振り返る。
「……ああ!」
そこで違和感の正体に気づき、思わず声を上げる。
「ど、どうしたの、急に」
ラークスパーに不審に思われたらしく、ガルライディアに少々冷めた視線が刺さる。
「あき、……ラークスパーさん! 変身する時、変身以外の言葉でも変身出来るんですか⁈」
ガルライディアは、今の今まで他人の変身に立ち会ったことがなかったため、気が付かなかったが、変身するからといって、別に変身と言う必要はない。
むしろ、明確なイメージさえ出来れば無言でも変身出来る。魔法少女達は、各々変身後の姿をイメージしやすい言葉で変身しているのだ。
このような説明がラークスパーからガルライディアにされる。
「初耳です。……他の言葉思いつかないんでいいですけど」
口ではそう言いつつも、若干残念そうなガルライディアだった。
日の光が照らすなか、建物を目の前にして、結はあるものを視界に納めていた。
そこにあったのは、5つの銅像。
5つ全てが少女を模り、皆それぞれ特徴的な格好をしている。
「……『原初の五人』」
結がじっと銅像を見ていると、亮歩が不意にそう呟いた。
「この人たちが……」
声が漏れ出る。
『原初の五人』。
日本での最初期の魔法少女にして、日本に最初に出現した魔物『人滅龍・八岐大蛇』と相討ちになった5人の少女である。
真ん中の銅像の少女は、『火雷の魔法少女 バーニングボルテージ』。ガッツリ英語の名前に反して、纏う衣服は、和風。
刀を突き立て、両手を柄頭に添えたその少女は今現在の魔法少女も含めて、未だ最強であると言われている。
死後30年近くなっても頂にいるのだから、まさに伝説だ。
その為か、Sランクに認定された魔法少女の二つ名(○○の魔法少女の○の部分)には必ず「絶」の文字を入れるのだが、バーニングボルテージだけは、火雷なのだ。
他4人は、右から順に
『絶傷の魔法少女 アンチクロックワイズ』
『絶染の魔法少女 インフィニートストレーガ』
『絶在の魔法少女 スカルデマイズ』
『絶壊の魔法少女 レイジモルダー』
5人共、文字通り歴史に残る英雄。
彼女達は、最期まで戦い抜いて後を託して逝った。
魔法少女は、自分は、彼女達が守った場所を己が力を以って、守り続けなければならないのではないか。
自分にそれが出来るのか。
ガルライディアは、それがとても不安に思えてしまった。
火雷の魔法少女 バーニングボルテージ
バーニング 燃えている、燃えるような
ボルテージ 高電圧
絶傷 アンチクロックワイズ
アンチクロックワイズ 反時計回り
絶染 インフィニーストレーガ
インフィニート 無限の
ストレーガ 魔女
絶在 スカルデマイズ
スカル 頭蓋骨
デマイズ 死亡
絶壊 レイジモルダー
レイジ 怒り、激しさ
モルダー 崩壊する
ネーミングはこんなの。
今後もちょくちょくやっていこうかと思います。




