朱殷 Ⅰ
タイトルは「しゅあん」と読みます。
赤黒い色を表す言葉です。
白刃が翻る。獣はその身を躍らせる。
散るは赤色。響くは気合と苦痛。
そこは、街近郊の森林の中。
純白の衣を纏い、仄白き軌跡を残す。
彼女の名は、グラジオラス。
彼女は、彼女達は、今街に近づいてきた魔物を追っていた。
「はぁっ!」
一閃。魔物に擦り、少しの血と魔力が散る。
魔物は、逃げる。木々の生い茂る森の中を木から木へ跳び乗っていく。
今回の魔物は、猿型の魔物。曲芸じみたその軌道をグラジオラスは捉えきれずにいた。
「ガルライディア!」
けれど、グラジオラスも逃げられるのは承知の事。
すぐさま、ガルライディアへと短く合図を送る。
「う、うん。『爆裂』!」
ここで、ガルライディアは最近身に付けた魔法を使用する。
『爆裂』は、収束、発射した魔力を着弾時に爆発させる魔法。
以前放ったものよりも、規模の大きい爆発が起こる。
しかし、魔物は爆発の起こった木よりも奥にいた。
動きを見るに効果はなかったようだ。
しかし、魔物が向かった先にはグラジオラスの姿があった。
少しでも攻撃が当たれば、猿型の魔物はより複雑に動き回りながら逃げる。
そのことをグラジオラスは経験から知っていた。
だからこそ、一度斬りガルライディアにも攻撃をさせて、その隙に魔物の前に回り込んだのだ。
「せぇあぁっ!」
両刀で挟み込むように斬り裂く。
浅く、けれど先よりは深く魔物の身を削る。
「ギィィ!」
初めて上がる魔物の悲鳴。
必死に逃げる魔物。しかし、その動きは先程よりも数段鈍い。
そして、それをグラジオラスが皆逃すはずがない。
すぐさま、魔力放出を以て魔物に追い縋る。
「『起源魔法』」
彼女の周囲で壮絶な程の魔力が渦巻く。
それに気付いた魔物は、進行方向を変えようとしても、既に遅く、咄嗟に選んだことは体当たり。
それでも、魔物の巨体から繰り出されるそれは魔法少女相手にも、有効である。
「『断崖絶壁毀す白亜の加護』」
目の前の魔法少女は例外だが。
読んで頂きありがとうございます。
起源魔法についての説明はまた今度。
にしても、グラジオラスさん初登場から2ヶ月で漸く魔法を使いましたね。
……ペース遅くて申し訳ないです。




