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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
初めての変身

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久方ぶりのお出かけ Ⅱ

 

 服屋巡りの後は、雑貨屋に行く予定だったのだが、


「あら?」


 偶々、スマホにて時刻を確認した香織が声を上げる。

 どうしたのだろうかと、結はスマホを覗き込んだ。


 そこに示されている時刻は午後2時半をとっくに過ぎていた。


「気づかなかったわね…‥」


「ね……」


 はしゃぎ回り時間(と我)を忘れていた香織と、香織に押される形とはいえ、時計を確認しようとしなかったどころか、思いつきもしなかった結。


 2人の周囲だけ、時が止まったように静まり返っていた。


 暫くの後、結のお腹から、くぅ〜と小さいながらも確かな音が……。

 途端に朱に染まる彼女の頬。


「ご飯、何がいい?」


 香織が結を慈愛に満ちた目で見つめる。

 結は耳まで朱色の侵食を許す羽目になった。



 フードコートにて、結は冷やしうどんを、香織は冷やしそばをそれぞれ購入した。


 冷たい麺に舌鼓を打ちつつ、結は香織に気になっていたことを問いかけた。


「午後は、お母さんのお洋服を見に行くの?」


 午前中に見たのは、結の服のみ。そこからくる質問だったが、香織は当然の如く、


「お母さんの服はいいの。午後は……、どうしようか。結は行きたい場所、ある?」


 自分の分はいいと答えた。

 結はそれに少しばかり思う事があったらしく、


「お母さん、忙しくてお洋服見に行けてないんじゃないの?私のことはいいから、行こうよっ」


 結が些か焦ったように言葉を重ねた。

 香織は、自分の事を考えてくれる娘にほっこりとしていた。

 それでも、見に行くつもりはないらしい。


「たまにはおしゃれした姿、お父さんに見せたくない?」


 しかし、件の娘は爆弾を投下した。


 ()()()()()()()()()()、普段娘に全くおしゃれをしていないと思われていたと分かって、香織の心に中々のダメージが入る。


 仕事着はスーツだから、そんなにおしゃれじゃないだろうけど、と自分を慰れるように内心考える香織。

 髪型やらのことは、棚上げするらしい。


 ただ、香織は昌継に見せたくないのか、という部分に対しては言いたい事があった。


「そもそも、お父さんと付き合い始めた頃、私おしゃれとは、程遠いところに居たわよ。だから今更よ」


 香織の脳裏には、高校時代の中々に"あれ"だった頃の事が思い浮かんでいた。

 番長とまで呼ばれた、不良としか言いようのないあの頃。

 もはや、半分くらい黒歴史になっている当時に付き合い始めたのだから、大丈夫だと香織は思っていた。


 だが、


「前にお父さん、お母さんが最近おしゃれしてないって、おしゃれして嬉しそうにしてるの見てないって、寂しがってたよ?」


 結は爆弾の次に、ICBM(大陸間弾道ミサイル)を投下。


「うぅっ……」

 香織としては、家族と出掛ける事が嬉しくて、服装に気合が入っただけで、おしゃれ自体を楽しんでいたわけではない。

 それでも、着実に香織にヒットする結の言葉(I C B M)

 何度か揺れ動き、


「……ちょっとだけ、見に行っていい?」


 頬をそめながら、ついに陥落した。


 結はその様子に密かに安心していた。


 そもそも、昌継は、家族で出掛けられていない事を結や香織に対して、申し訳なく、そして、自分自身も寂しく思っていることを結に話しただけだ。

 おしゃれ云々は全くのデタラメである。


 何故そんな事をしたのかというと、小学校からの帰り道にて、民家の前でおばさま方が


「最近すっかり夫と冷めきっちまって、おしゃれなんざする気にもならんねぇ」


「うちもだよ。特にうちの旦那は――」


 などと話していたのを聞いてしまったからだ。


 香織が服を見ないと言った時には、結は内心大荒れだった。

 結からしたら、両親の離婚の危機である。

 少なくとも、結にはそう思えた。


 結の心配は、全くもって不要だったわけだが。




読んで頂きありがとうございます。


香織さん、まさかの元不良です。

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