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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
真なる欲望

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CO2は不要

 魔法少女強化プログラム2週間目。


 街を発ったのはセージゲイズとエレクとクリムゾン・アンドロメダの3名。

 街に残っているのはガルライディア、グラジオラス、ファルフジウム。(一応ベンゾイルも動けないことは無く、所属などはないがアンチクロックワイズもいる)


 またラークスパーは書類上は上記の魔法少女達と同じ魔法局支部の所属ではあるが、立場的には魔法局本部から仕事が舞い込んでくる調査員だ。

 あれで、ベンゾイル――魔法少女監督役の清水――よりも立場は上である。


 子供よりも子供っぽい行動も散見されるが。

 かなり優秀な存在である。


 兎も角、街に残る魔法少女は人数は同じだが、殲滅力は現状の方が下になっている。

 普通ならエレクとアンドロメダは分けるべきなのだが、今回は事情がある。


 ()をつくるのだ。

『魔人同盟』に対して街が手薄になっていると思わせ、行動を起こさせるためだ。

 また、高機動かつ戦闘能力の高い魔法少女を周囲の街の穴埋めとして派遣しているので、平時の数倍は救援は速い。あからさまな隙は見せても、本当に隙にしては駄目だ。


 そもそもの話だ。

 エレク、アンドロメダに続く火力のガルライディア、近距離で火力を出しやすいファルフジウム、前線で味方を守れるグラジオラスの3名の繰り合わせは、アンチクロックワイズやベンゾイルもいる前提ではあるが長時間の防衛線をしやすい組み合わせだ。

 そして、殲滅力は低い。


 要は良い感じに苦戦しやすいようにしている。

 救援を待ちやすく、襲撃を誘発しやすい。

 その為の組み合わせだ。


 ただ、まぁラウムがこの程度で手を出してくるとは思えない。

 その程度の敵ならば15年は前にアンドロメダによって塵にされている。


 動けば儲けもの位のものだ。

 攻め込むときの為に(・・・・・・・・・)戦力を削りたいが、街に被害を出しては元も子もない。

 動かないならばそっちの方がいい。


 救援に関してはかなりのリソースが費やされているので、被害は出ても少なくなるようにはされている。

 それでも、力無いものからすればたまったものではないだろう。


 閑話休題。

 当然ながら、人数が減った分の補充要員が今日派遣されてくる。


 魔法局支部の中の1つの会議室。

 そこで出迎える為に魔法少女達は集められていた。そこには当然ながら清水 創美の姿もある。


「今日来られるのって、Aランクかつベテランの方なんですよね?」

「そうですね。『深緑』の魔法少女 アルベロ。植物を操り、妨害・補助をメインとするらしいですね。あとは噂ですけど、太陽光を受けている間魔力の回復速度が上がるとか…………」

「肌の色緑だったりします?」


 事前に配られていた資料を再度読みながら、特定の誰かの質問でなく話のネタとして問うた結。

 それへの返答は守美子。とは言え、彼女のアンテナはお世辞にも高くはない。情報はそう多くなかった。


 ちゃちゃを入れたのは美勇。

 言葉は軽いが、表情は真剣だった。

 魔法少女にとって自身の持ちうる魔力の遣り繰りは一生の課題だ。

 それがやりやすそうな能力には当然興味がある。

 自身の特性が周辺の魔力を奪うものである為に、他2人よりもアルベロの噂の真偽は重要だ。

 自分もそれが出来るようになれば強くなれるのだから。


「アルベロが光合成(・・・)するのは本当よ。魔力も多いし継戦能力は下手なSランクよりもよっぽど上よ。あと彼女、ラークと仲いいのよね。同い年だし」

「マジっすか?」


 仕事中だと言うのに、普段通りの口調で追加情報を入れた創美。

 最近単純な仕事とは別にヒュアティンテの特性の考察に時間を取られ、その顔には化粧では隠し切れない疲労が滲んでいる。だからこそ、会話で紛らわせようとしているのだが。


 前述の通り、ラークスパーは本部からの依頼を受け日本各地を回っている。

 その為もあって、知り合いが多い。

 今日から派遣されるアルベロもその内の1人。

 その中でも特に仲のいい方でもある。


 ノック4回。

 その音は控えめに。


「どうぞ」


 即応は代表者でもある創美。

 他3名も雑談をやめ、姿勢を正す。


 この場合座ったままなのは問題になるかもしれないが、流石に未成年にそこまで求める訳にも行かない。

 社会人としての対応は創美1人で十分だ。


 扉が開き、覗き込むように顔を出す。

 灰色のロングヘア―。

 黒にほど近い緑の瞳。

 纏う服は瞳と同色がベースのゴスロリ。

 身長は150cmに届かないくらい。


 平時は追加で体躯を超える大きさの戦斧を背負っているが、今日は何か大きい風呂敷を背負っている。

 彼女こそがAランク魔法少女『深緑』の魔法少女 アルベロである。


「ようこそおこし下さいました。アルベロさん」

「…………先輩やめて、それ。違和感がヤバいんで。まぁ、兎も角これから1週間お世話になります。――これ、お近づきの印に」


 ドスン、と重々しい音共に風呂敷が床、魔法少女達が座っているソファーの横へ。

 創美に促され、その正面のソファーに腰かけてからちらちらと風呂敷と魔法少女達の顔を視線が往復している。


「…………開けてもよろしいですか?」

「――どうぞ」


 視線に負けた守美子。

 ゆっくりと風呂敷の結び目を解く。


 そこに鎮座しているのは多少の焼き菓子。

 その下には大量の漫画。

 総数約100冊。


「ラっちゃんが談話室が殺風景って言ってたから、良かったら読んで」


 目がガチだった。


 魔法少女は少女期からかなりの期間、社会の普通(・・)から離れた生活を送る。


 言い方は悪いが社会経験が足りないのだ。

 その結果、子供の頃の行動から脱せないケースが多い。

 特に日々を命のやり取りに費やしている関係なのかなんなのか、少女期の趣味嗜好がずっと続く者が多い。


 それが悪いこととは完全には言い切れない。

 とは言え、大量の漫画はお近づきの印としてもってくるものではないだろう。


 建前の奥にあるのは完全に布教のそれだ。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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