魔法具 Ⅱ
『フライクーゲル』。
それがガルライディアの魔法具の名称だと言う。
銃身には、その名が彫り込まれている。
フライクーゲル、
その意味は、ドイツの民間伝説の魔法の弾丸。
伝説において、その弾丸は7発中6発は射手の望んだ場所に命中するが、残り1発は悪魔の望んだ場所に命中する。
では、何故その名を冠するのか。
それは、魔法具とは何かから考えれば分かるかもしれない。
そうセージゲイズは語る。
「そもそも、魔法具というのは初めて魔法少女になる時にその人の身体から大量に溢れ出す魔力によって、形作られると言われているわ。そのせいか、魔法具の性質は魔法少女の心象風景、すなわち心の内と、魔法少女になった時の思いによる……というのが通説ね」
セージゲイズの言葉を具体的に言うのならば、
ガルライディアの心象風景と、魔法少女になった際の思いが『フライクーゲル』を形成したということになる。
「でも、どうしてドイツの話なのかな……」
マギホンを用いて、ドイツ民間伝説を調べながら、ガルライディアは思わず呟いた。
ガルライディア―結はハーフでもクォーターでも無い。
というよりも、日本人以外の血が流れているなんて話に聞き覚えは無い。
「魔法具の名称と出身国に関係がある場合もあるけれど、私もエレクも関係ないから深く考えなくてもいいと思うわよ」
セージゲイズには、ガルライディアの呟きが聞こえていたのだろう。
「魔法具銘はともかくとして、性能とかの説明をしましょうか」
セージゲイズが話を戻しに掛かる。
「あ、はい。お願いします」
ガルライディアも顔を上げ、そう答えた。
セージゲイズ曰く、
普通に魔力を込めて撃ち出すことは、もちろんのこと。
7発装填のマガジン(ガルライディアのベルトのポーチに左右各2本+フライクーゲルに各1本、計6本ある)は、ガルライディアの余剰魔力を集めて弾丸にする。
その弾丸は、魔力の塊撃ち出すことでただ魔力を込めて撃つのとは、比較にならない威力になる。
なお、弾丸の使用不使用はスイッチ式なのだとか。
ガルライディアが確認したところ、グリップの本来なら安全装置のある場所にそれらしきものを見つけた。
それと、もう一つ機能があるらしいのだが、セージゲイズが魔法でいくら確認しても、使い方がわからなかった。
その事が気がかりで、ガルライディアはマガジンを抜き入れしたり、魔力を込めたりと『フライクーゲル』を弄り回す。
が、一向に変化はない。
ガルライディアは、がっかりとしている。
それでも、何かないかと思考を巡らせているが。
「ガルライディアさん、とりあえず魔力制御の練習を始めましょうか」
セージゲイズの言葉でガルライディアは、一度考えるのをやめた。
また、蚊帳の外にいたエレクも近づいてきた。
「まずお手本を。エレク、お願いするわ」
「承知した。では、赤花の子よ。刮目せよ」
エレクは、そう言うと己の杖に魔力を込め出した。
読んで頂きありがとうございます。
作中では、初夏の頃ですので、クリスマス会は無しで。
……決して作者がクリスマスのイベントの描写が分からなかったからではありません。
無いと信じたい。