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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
罪の所在

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罪過と傷

「お母さん、聞きたいことがあるんだ」


『魔人同盟』の襲来、アンチクロックワイズの再来など様々なことが起こってから早一週間、美勇は夕ご飯の後に母親に切り込んだ。


 このタイミングであったのは、本人の怠惰と直感のようなものだった。


 前までは時間があるときでいいと考えていた。

 だが、彼女の直感が告げていた。


 ――そろそろ大きな戦いとなる、と。


 実際魔法局の上層部は現在大規模な作戦の調整中であり、魔法少女である美勇が腰を落ち着けて話を出来る時間は今しかないだろう。


クソ親父(・・・・)について」

「――――」


 千里の呼吸が止まった。

 かれこれ五年以上聞いていない美勇の父親呼びに驚いたのではない。


 それも含まれてはいるが、彼女自らが誠一の事を知ろうとしたことに対してだ。


「……具体的には?」

「たくさん酷いことをされたお母さんが未だに情を捨てきれない理由」


 なんとなく、分かっているつもりだった。

 けれども、大きくバイアスがかかっているだろう娘にも己の内面がばれていると完全に認識させられるのは、少し辛かった。


「そう、ね………………、お母さんね、あんまり家庭環境が良くなくてね」


 そう言えば、母方の祖父母にあったことはなかったなと、美勇は千里の話を聞きながらその理由を凡そ把握した。


「高校を卒業したら逃げるように家を出たわ。……でも、最初の職場もろくでもないところでね。………………そこで助けてくれたのがお父さん(・・・・)だったの」


 これまで美勇が嫌がるからと避けてきた呼称を敢えてして千里は目を細めた。

 友達らしい人さえいなかった己が恋に落ちるのは当然と言えた程、自身の道行を決定付けた瞬間だった。


「それっぽく言うのなら、お母さんにとっての希望だった。だから、自分を救い出してくれた人を今になってもほんの少しだけ信じたいって思ってしまう」

「………………そっか」


 僅かに寂しげに笑みを浮かべる。

 娘ながら、千里のその表情は儚さを感じた。


「――とは言え、出会いのあれこれの思い出補正と一緒に居た時間が長かったから残っているだけで、彼は許されないことを、私との出会いの時の言葉を自分から否定したんだから、離婚は確定よ」

「いいの…………?」

「ええ。多分もうあの頃の誠一さんは戻ってこないから」


 恋人であった頃や、結婚してからも美勇を介さない時の呼称に深い意味はない。

 無いのだ。


 お茶を用意して、お互い一息つく。

 先程まで母娘の間に漂っていた重苦しい空気感は綺麗に霧散した。


「それにしても、美勇はどうしてこの話を聞きたがったの?」

「んー、あれだよ。私自身が嫌いなのは変わらないけど、お母さんの方の考えとかは聞いてみようかなって思っただけ」


 守美子が言っていた、千里の感情はどうあれ美勇自身の感情に従えばいい、で美勇自身もいいとは思っている。

 それでも、一度位は聞いてみたかった。


 ただそれだけだ。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。


ぶっちゃけ環境に恵まれて生きてきたので、キャラクターごとの思考回路に基づく感情とか全然想像つかなかった。

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