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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
罪の所在

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絶傷 Ⅰ

 加集 結、魔法少女として日々戦っている彼女は現在ふらふらと歩を進めていた。


 ラウム達が街から消えて、10秒と経たぬ内にガルライディア(ゆい)は意識を手放した。

 だからこそ、確証がない(・・・・・)のだ。


 付き添いの者はいない。

 香織を含めて、皆忙しいのだ。


 着いたのは街毎に存在する中心地の総合病院。

 魔法少女特権として、事前に知人だと伝えておけば申請などで受付を介することなく、直接病室へと行っても問題ない。


 創美に伝えられた部屋へ向かい、必要以上に力を入れて扉を開けた。


「――あ、結ちゃんっ」


 そこにいたのは謡とその母と陽子の三人。


「ぁ」


 力が抜けた。


 そう、謡だ。

 あの時、ヒュアツィンテの槍に刺された彼女は生きていた。

 綺麗に心臓を一突きされて、結が応急処置もせずにヒュアツィンテと戦っていてなお、少女の身に後遺症はなく。


 一旦検査入院となったが、それの結果も問題なし。

 明日には退院できる余計だ。


「…………死んじゃった、かと……………………」


 ぽたりぽたりと雫が落ちる。

 バツが悪そうに目を逸らす友人二人。


 どれくらいそのままだっただろうか。

 謡の母が徐に立ち上がる。


 両腕を持ち上げる。


「あでっ…………」

「いっっ……~~~~」


 鉄拳二振り、両腕で娘とその友の二人の頭頂部に叩き込む。

 不機嫌を隠すことなく、腕を組んで二人を睨みつける。


「親だけでなく友達も泣かせたんだ、猛省しな。…………最初の贖罪は友達の涙を止めること」


 それだけ言って彼女は謡の荷物を纏めだした。


 娘達が空気に耐えられなくなって、噴き出すまで後2分半。



 _________________________




 結が病室を出たのは、面会時間ギリギリになってからだった。

 結より早く来ていた陽子は既に帰っていて、結自身は看護師に急かされる様に退室する始末だ。


「――少しお時間いいですか…………ガルライディアさん」

「……あなたは…………?」


 魔法少女としての名は耳元で。

 病室のすぐ外で待っていた女性に視線を向ける。


 身長は170cm以上。

 見た目からの年齢は20代だが、雰囲気から感じる印象は香織や創美以上。


 ちぐはぐな様子と呼ばれた名に警戒心が芽吹く。


「私の名は、水上 光。正体は、これでどうでしょうか?」

「――分かりました。魔法局でいいですか?」

「ええ」


 結をのぞき込む瞳に宿る光は白銀。

 その色の持ち主は歴史上二人だけ。そして、その内の一人の身長は150cmも無い。

 だから一人に確定される。


 二人は連れ添って魔法局の中へ。

 最上階の監督用執務室へと躊躇なく進む光に半ば無理やり引っ張られる形で結も歩みを進める。


 ノックは4回。

 創美の返事を待ってからドアを開ける。


「つぐみん、今時間ありますか?」

「あるにはある…………光、説明しなさい」


 腕を掴まれた小学生に眉を顰めた創美に部屋に招かれ、紅茶の用意を待つ。

 慌てて用意に動こうとした結は、以前と同様に創美に止められた。

 母親としての性に近いものを感じる。


 コト、と僅かな音と共にテーブルに置かれるカップが3つ。

 光が一口紅茶を飲み込んだのを見てから、結は口を開いた。


「それで、水上さん。私に用事とは?」

「本題の前に少し、前提のお話を」


 ゆっくりと、語りだす。

 彼女の力の起源について。


 水上 光。

 別名、絶傷の魔法少女 アンチクロックワイズの魔力特性は『時間』。


 空間干渉を成すラウムの力と対を成す時間干渉を可能とする、魔法の中でも一際異質な力だ。

 彼女は時間の停止・回帰を得意としていたためにかつては最強のヒーラー兼サポーターであった。


 創美のことをあだ名で呼ぶ理由は同じ年かつ得意分野が似ていたことで親睦を深める機会が多かったためであるが、ここは前提の話とも逸れるので割愛する。


「――そして、『時間』の力を得たのは、初めてとは言え一瞬変身を躊躇したことで、妹を目の前で失ったためです」


 少しだけ俯き、細く息を吐く。

 光のそんな仕草の音がはっきりと耳に入る程、そこは静まり返っていた。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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