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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
罪の所在

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銀光

 絶叫する轟音。

 波及する衝撃。


 鉄拳一つで地面に叩きつけられたヒュアツィンテの五体は砕けていた。

 壮絶な痛みが全身を襲い、脳を侵す。


 だが、彼女の生存本能が魔力の流れをギリギリで整えた。

 なんとか肉体を修復して、空への視線を向ける。


 そこには己の肉体を砕いた下手人が立っている(・・・・・)

 薄汚れた紅が主となり、ところどころ別の色が混じる不思議な魔力の螺旋がガルライディアの周囲を時計回りに巡る。


 色は深紅、純白、青紫、透明に程近い紫、黄色、あと一色判別できないが赤系統。

 ヒュアツィンテの四肢同様に拉げた右腕が風に揺れる。


 だが、次の瞬間には元通り。


(圧倒的な回復力とさっきの身体強化、あれが『潰滅』の力なのはたしか。………………でもどうして結がその力を――)


 トン、と軽い調子で少女は立っていた空中を蹴った。

 バチリと閃電が鳴った。


「――――ッッ!!」


 勘か生存本能か、兎も角けたたましい警鐘に従って魔力放出含む全力でバックジャンプ。

 だが、ヒュアツィンテの背後には大規模な障壁が一つ。


 魔力で砕けたが彼女の退避は大きく遅れた。


 眼前に躍り出たガルライディアの魔力が跳ね上がる。

 右腕どころか全身を覆うヒュアツィンテでも困難な程の出力。


 放たれた拳に空間が悲鳴を上げた。物理的(・・・)に。


 ギイィィンッ――、とヒュアツィンテのギリギリ前でガルライディアの拳は止まっていた。


「空間断絶……」


 ヒュアツィンテがそれを正確に認識する前にぼそりと呟いて、今度は左腕を持ち上げる。

 瞬間爆ぜる空間。


 咄嗟に放った左ストレートである程度衝撃を減衰させたガルライディア。

 その顔をヒュアツィンテは認識出来なくなった。


「――チッ、忌々しい」


『魔人同盟』の生みの親である首魁、ラウム。

 最初に砕いた街を覆う大結界を更に破砕して、なんとか出力を確保した彼女はギリギリのところでヒュアツィンテの命を救った。


 表情を大きく歪ませているラウムだが、それでいて内心は割と冷静であった。


(『潰滅』、更に言えばクリムゾン・アンドロメダの魔力そのもの。だが、その力だけではない。この街の魔法少女全員の魔力が(・・・・・・・・・・)混じっている(・・・・・・)。その分単体の力は劣る、か。いや、それ以外の魔力もあるのか)


「…………成程、傲慢なことだ」


 ガルライディアの力の本質までをざっくりと推察して吐き捨てる。


「ハアァッ!」


 硝子の砕け散るような音と共に破砕される空間断絶。

 ラウムは面倒くさそうにガルライディアの周囲六面を三重の空間断絶で覆って、ヒュアツィンテに目を向ける。


「……転移させる(飛ばす)ぞ」

「ま、待って…………さっきの――」


 言葉を無視して転移を強行。

 半壊状態の大結界ならば影響下でも転移位は行える。


 拳を空間に打ち付ける。

 だが、先程は砕けたそれはびくともしない。


 それどころかガルライディアを覆っていた魔力の渦は鳴りを潜めてしまっている。


「ア゛アアァアアッ――!!」


 咆哮を上げて魔力を振り絞る。

 先程の全能感と虚無感をない交ぜにしたような魔力の濁流は無く、彼女の『収束』のみの拳ではラウムの空間断絶を砕けない。

 この事態に直面し、過度に熱されていた思考が急激に冷めていく。


「『貫通ペネトレート』!」


 収束魔力弾に加えてありったけの魔力を込めて、まずは一枚。

 もう一方で更に一枚。

 最後――


「させる訳が無いだろう」


 最後の空間断絶を突破した瞬間に魔法が追加される。

 空間断絶で囲った瞬間にガルライディアの魔力が元に戻ったのを感知して、魔人の回収を後回しにして様子を見ていたラウム。


 ラウムの空間断絶は消費の悪い魔法ではない。

 寧ろ空間干渉魔法の中では維持時間が短ければ消費魔力は少ない方だ。


 対して、ガルライディアが空間断絶一つを突破するのに必要な魔力はかなり多い。

 収束魔力弾が尽きた後は、2度破れれば良い方だろう。


 要は時間を掛ければラウムはガルライディアを完全に無力化できる。

 この少女には使い道があるので殺すのは惜しい。

 ただ時間が掛かって面倒くさい。


 そのため、ラウムは魔法をより強固に展開して空間断絶の魔力への耐性を引き上げた。


 その結果、


「止まれ」


 防御が手薄になる。


 ラウムの黒金と対になる白銀の魔力。

 ラウムが魔法を使ったその一瞬で彼女を覆い、瞬きの間に動きを停止させる。


 白ベースのドレスアーマーに左右で長さの異なる長剣。

 銀に棚引く髪を揺らす、その姿をガルライディアは、否あらゆる魔法少女は見たことがある。


 空間断絶が無くなり、自由の身となったガルライディアであるが、あまりの衝撃に身動きが取れずにいた。


「アンチ、クロックワイズ………………?」


 僅かに動きを見せたのは口だけ。


 ガルライディアの目の前に現れた白銀の主は世間では故人とされている絶傷の魔法少女 アンチクロックワイズ。

『原初の五人』の内の一人と瓜二つであった。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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