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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
罪の所在

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奪い奪われ

収奪ゼクス』プラダとファルフジウムとの打ち合いは、魔法使い同士だからこそ起こりうる状況となっていた。


 キィン、と甲高い音色と共に魔力が火花と化す。

 ファルフジウムの全身から噴き出す黄煌の魔力と、プラダの両手から溢れる底冷えするような青黒の魔力が拮抗し、どちらとも言えない色として散る。


(グラさんクラスに硬い…………、いや違うね。私と同じ(・・)か)


 拳と剣とが拮抗する異常事態。

 街の魔法少女はグラジオラスが拳に障壁を纏わせてそれを実践してくるのもあって、割と慣れた光景である。


 だが、それはグラジオラスが歴戦の近接型障壁使いだからこそ為せる業である。

 勿論魔人の膨大な魔力を用いれば結果だけはグラジオラス以上に出せるが、プラダはそうではない。


(込められた魔力が異常に多い訳じゃない。ガルっちが真面目に殺しに来るときの魔力の8割位。…………でも、奪われる)


百折不撓即ち勇気の証(ライジングブレイブ)』発動下のファルフジウムと同等以上の身体能力をみせるプラダは十分な脅威ではあるが、その魔力は異質だ。


 一呼吸の内に放った5連撃はプラダの小さな拳に綺麗に相殺される。

 ファルフジウムが周囲に触発されて覚えた瞬間的な出力上昇にプラダの魔力制御は追い付いていない。

 それでも、相殺に留まった。


 最後の一撃で彼我の距離を大きく離して、ファルフジウムは止めていた呼吸を再開した。


「あなた、周りから魔力奪ってるでしょ?」

「おねえさんもじゃん。こういうのなんて言うんだっけ。……同じ穴の…………」

「狢かな……」


 会話で時間を稼ぎながらプラダの周囲の魔力を探る。

 空気中に存在する魔力が僅かずつに何もせずにプラダの元に集まって身体の中へと入りこんでいく。


 ファルフジウムが保有する魔導具は『魔力吸収』の魔法が刻まれており魔法発動時の『累加』の力を補強してくれる。

 しかし、『魔力吸収』は常時魔力を吸収できるほどコスパのいい魔法ではない。

 あくまで手や剣に魔力を込める時のみにとどめて運用している。


 プラダの魔力の吸収は常時起こっている。

 だとすると彼女は素で『百折不撓即ち勇気の証(ライジングブレイブ)』発動時のファルフジウムと同じことを行っている。


(持久戦はこっちが不利か)


 微々たる量とは言え常に回復し続けるそもそもの保有量が多い存在は厄介にも程がある。


(なんかいつも速攻してる気がするけど――――いいや。行こう)


 蹴り足に魔力を込めて、一歩を踏み出す。

 振るわれる拳に対して、迎撃は魔力の薄めな腕を狙って弾く。


 ぴしりとプラダの腕の表皮が僅かに裂ける。

 ほんの少しプラダの顔が歪んだ。


「邪魔!!」


 ファルフジウムの腹にめり込む小さな膝。

 けれども、可愛らしいサイズのくせに威力は微塵も可愛くない。


「か、は…………っ」


 肺の空気をめいっぱい吐き出して、地面を転がりながらも剣の柄のソケットに携帯を落とし込む。

 鈍痛を無視して大きく息を吸い込んで、携帯の補助込みの魔力放出。

 先程の比ではない速度にて、プラダの眼前に。


 ――『Brave・Blade!』


「「ハアッ!」」


 異口同音の気合と共に、両者全力の魔力を以て相手を食らう。

 ファルフジウムの上段からの袈裟に対するプラダは右腕一本。


 黄煌と青黒の魔力が互いに互いを貪るように削り合う。

 夜闇を斬り裂く二色の光。

 一時拮抗したその力は少しずつ黄煌に偏りつつある。


 体格差に互いの位置、腕の本数全てがかみ合って、なんとか鍔競り合いに打ち勝つ。

 千載一遇のチャンス、ここで決める!


 ベルトのボタンを勢いよく押下。

 剣を振り下ろし切った姿勢から即時携帯を右脚に移す。


 ――『Nova・Brave・Finish!!』


 飛び込んでの全力の右蹴り。

 それに先んじてプラダが踏み込んだ。


「あはッ」


 左での貫き手。

 青黒の魔力が牙を剥く!

 ファルフジウムの脇腹が、獣が食らった痕のような形に抉られる。


「――ッア゛アァアッ!!」


 焼けるような激痛。

 血肉が零れる。


 だが、それは彼女が止まる理由にはならない。

 より一層魔力を噴出。

 他の面々への増援分なんて捨て置いて、全てをこの一瞬に注ぎ込む。


 夜の帳が弾け飛び、金色かの如き煌きが世界を満たした。



 _________________________




「…………これ、ヤバいかな……………………」


 プラダの意識は刈り取れた。

 だが、その代償は大きい。


 抉られた脇腹からはとめどなく血が流れ、手で抑える程度ではどうしようもない。

 壁に背を預けなんとか意識も保っているが、それも段々と限界が近づいてきている。


「くそ…………」


 まだやり残したことがある。

 伝えなきゃいけないこともあった。


 でも、もう――


「もう大丈夫です。私がいるのですから」


 薄れゆく意識、霞む視界の中に少女は銀時計を見た。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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