表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
罪の所在

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

237/265

赫の再燃

「チィ…………、逃げるな!」


 猛烈な勢いで逃げ惑うガゼル型の魔物。

 それに追走するのはクリムゾン・アンドロメダ。


 魔物と魔法少女(35)の追いかけっこは時速にして、150kmを超える。


 ガゼルは食物連鎖的には肉食動物に狩られる立場ではある。


 だが、魔物というのは人類を積極的に狙う。

 そこには生存本能による強者と弱者との見分けのようなものも大して見受けられず、魔法少女相手にだって積極的に突っ込んでくるのだ。


 だというのに、このガゼルはアンドロメダから逃げている。

 ということは、だ。


(改造された魔物、か。ラウムがよく嗾けてきた頃のは戦闘特化ばかりだったけれど、十年ちょっとで別の方向も研究したか、…………綾生ちゃんか)


 娘の友のことだ。

 白川 綾生のことはしっかりと覚えている。

 そして、彼女が姿を消したときの娘の暴走も。

 その時の壊すしか出来ない己の無力感も。


(…………兎も角、魔物である以上魔力を求めはする筈。ということは、一般市民狙いか。街の複数個所に出現したのもあって大半が家に籠っている。民家を襲う前に屠らないと…………)


 魔物は道路を縦横無尽に駆け回り、それに引き離されないギリギリの出力で追い掛ける。

 肉体の衰えと怪我との影響でアンドロメダは昨年のクリスマス時よりも出せる出力は低い。

 だが、時速150km程度が限界になるほどでない。


「フッ…………!!」


 アンドロメダは身体強化の出力を一時的に身体が軋まないギリギリまで引き上げる。

 娘にも先輩にも叱られたのだ。

 限界以上の出力は基本出さない。


 200km/hを上回る速度でガゼルに追い付いて、角をがしりと掴む。

 地に足を杭のように叩きつけて大きく振りかぶる。


 ぎちり、と鈍鉄の音が木霊した。

 魔物の角から腕を通して全身に灰色の魔力が覆い被さる。


 今は亡き変速の魔法少女の力の極一端。

 それが無性に気に食わなかった。


「オォオオッッ!!」


 変速の片鱗、減速の力、それがどうした。

 彼女は衰えようともかつての最強、その身一つで天候すら変えた生きる伝説。

 大して使えていない力程度に負ける訳がない。


 身体強化の出力はそのままに、魔力放出で加速させる。

 魔物の身体を上空に放り投げる。


 この辺りは民家が多く、中心部ほどは高い建物がない。

 それ即ち障害が無いのだ。


「雪乃を、弄んでおいてその程度か…………! 舐めるなよ、あの子はもっと凄かった! もっと強かった――!!」


 彼女なら、指定した空間のあらゆる物体、魔法の動きに干渉できた。

 彼女なら、逃走のタイミングで加減速を交えて異様な緩急を付けて惑わせられた。

 彼女なら、もっと速くも遅くもできた。


 踏み込み一つ。

 地面が罅割れ、轟音が空を打つ。


 友を殺して、死後も弄んで、その結果がこれ(・・)とは彼女への冒涜でしかない。

 せめて彼女の力通りだったら、少しはマシな感情になれたのだろうか?


 そんな思いもエゴだ。


(あの時も、そうだった…………)


 空中で魔物に追い付いて、拳を振るう。


「『全て打ち砕く(クリムゾン・)深紅の鬼哭(インパクト)』ォ――ッ!」


 出力は抑えたつもりだ。

 だが、それでもその怒りの拳は魔物の肉体を消し飛ばした。


 魔石を掴んだ後に、軽い調子で着地する。


「雪乃、私は結局貴方を失ったこと自体じゃなくて、失った私にばっかり怒ってたのよ。馬鹿みたいね。…………こんな愚か者だけれども、貴方の友として」


 ――弔いだけは必ずする。


 その為にまずは――


「ちょっと回復しないとキツイか」


 少しばかり限界を超えた右腕の治療から始めた。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。


締まらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ