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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
罪の所在

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会話はしばいてから

 22時半過ぎ、ガルライディアが放った『貫通ペネトレート』が久々に現れた猪型の魔物の前脚を正確に貫いた。

 それも、時速にして50kmは余裕で出ている状態の魔物の、だ。


 流石に全速力で動き回りながらの射撃では太いとは決して言えない部位を正確に穿つ真似は出来ないが、射撃精度の向上は戦法の幅を大きく広げる。


 魔物は前脚から鮮血と魔力とを溢しながらもガルライディアに向けての全力で突進する。

 森林地帯ながら、少女と魔物との間は平ら、木の根すらない加速には丁度いい場所だった。


「ーー。『爆裂ブラスト』」


 すう、と呼吸を一つ。

 突っ込んでくる魔物の前脚が地面に接触する寸前に魔物の足元に魔弾を放って、身体を浮かす。


 爆炎が晴れた時にはもう終わっていた。

 魔弾を放つと同時に収束した高密度の魔力での魔力放出、踏み込み。

 ガルライディアは突き込むように両手の拳銃を魔物に叩きつける。


「『展開エクスパンション』」


 二発の弾丸。

 それらは体内を広範囲にわたって破壊する対生物用の凶悪な殺意の塊。


 首と腹をぐちゃぐちゃにされては、いくら魔物でもその生を終えざるを得ない。


「ふぅ…………」


 かつて血を見るのが嫌だった少女はもういない。

 慣れとは恐ろしい。





 ちなみに、いざ魔石を回収しようとしてガルライディアは「心臓狙えばよかったな……」と溢した。

 慣れとは恐ろしい。



 ____________________




 魔物の討伐を終えて魔石も回収。

 報告はマギホンにて行えるが、魔石は自分の手でもっていった方が速い。


 ガルライディアは魔法局支部を訪ね魔石を預けて、一応残業中の監督役に顔を見せに行く。

 魔石を預けた人曰く、清水 創美は魔法少女が顔を見せに来るのを割と楽しみにしているらしい。


 世話になっているし、どうせ帰っても寝るだけだ。

 それに深夜に魔物の討伐をしたのだ。

 10分や20分帰るのが遅くなっても誤差の範囲である。


 そもそも聞きたいこともある。


 というわけで――


「本日の猪型魔物の討伐は無事に終わりました」

「はい、お疲れ様。怪我もないようで良かったわ。…………で、それだけじゃないんでしょう?」


(よく気が付けるなぁ…………。そんなに顔に出やすかったりするのかな?)


 結本人は知らないが割と顔に出るし、態度や動作に出る。

 場合によっては社会に出ると苦労するタイプだ。

 特別性格が悪かったりはしないので、そこまで問題にはならないだろうが。


「え、っと魔法局内での母の扱いについて聞きたくて…………」

「それは、正式に所属する魔法少女ではないと知っての疑問?」

「はい。母曰く厳密に所属している訳ではないから基本いないものとして扱え、と」


 なるほどね、と呟くようにして創美は徐に立ち上がる。


「結さん、ちょっと座ってて。今お茶を用意するから」

「――あ、それなら私が」

「肩凝るから少し動きたいのよ」


 そう言われてしまえば結に動く理由はない。

 お湯を沸かしている間に、創美はいそいそと茶菓子を戸棚から取り出す。

 完全に家に孫が来たお婆ちゃんである。


「いただきます」

「遠慮せずに食べなさい。取り敢えずクリムゾンの話の前に、ガルライディアのAランク判定に関しては今度Aランクの魔物が出た時に大きく貢献すればほぼ確定だと思っていて」

「――っ。そんなの出ない方がいいんですけどね」


 そりゃあそうだと苦笑。

 かちりと電気ケトルから合図が鳴る。


 入れるお茶は割とお高めの緑茶。

 湯呑をことりと少女と自身の前に。


「――さて、現状『絶潰ぜっかい』クリムゾン・アンドロメダはこの魔法局支部の予備戦力(・・・・)扱いになっているわね」

「予備戦力、ですか。私達では手が足りないときなどだけ戦うってことですか」

「そうね。理解が早くて何よりよ」


 ほう、と溜息とも安堵とも取れる息が湯気を揺らす。

 一旦の安堵はあれども、結の目はやや鋭い。


(まだ終わってはいない。…………どころか何も解決していないんだから終わりはみえてない、か)


 結の頭にあるのは実力や魔力の問題では無かった。


 己にヒュアツィンテを、友を殺してでも止める覚悟がないことだった。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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