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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
罪の所在

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悩め若人よ Ⅰ

 シミュレーターにて疑似的に表れた熊型の魔物の爪での攻撃を寸前で躱して、ノールックで右側の後ろ脚を『衝撃インパクト』で撃ち抜いて、体勢を崩したところを首元へ向けたもう一方の拳銃からの『貫通ペネトレート』で命脈を断つ。


 シミュレーター上での出来事であり、街を覆う大結界とはまた別の魔物の心臓部である魔石が唯一安定的に得られる魔法局だからこそ展開できる対魔法結界に包まれた訓練室での戦いは一度終わりを迎えた。


「……次」


 先程シミュレーターにて熊を屠ったガルライディア――結は次の魔物との戦闘を開始する。

 先程の熊型のランクはCの上位からBの下位程度、成りたてなら兎も角半年以上戦ってきたガルライディアの敵ではない。


 ウォーミングアップはそこそこに次に戦うのは、『魔人同盟』の名を知らぬ頃に苦戦したサソリ型の原型(・・)

 今にして思えばクリスマスの『ハルトクレーテ』と同様に何かしらの手段を用いて改造された魔物であると分かる。


 話によるとラウムは改造魔物などをしばしば街に転移させたりしたこともあったらしいので、ほぼ確定と魔法局は判断している。


 それは一部あっていて、一部間違っている。

 ラウムが魔物の改造が出来ることと出現させたことがあるのは事実として、件のサソリ型はヒュアツィンテの手によるもの。

 ヒュアツィンテが弄った魔物をラウムが転移させた。


 結界内への転移はかなり厳しい条件を満たさねばならない為に基本的に使えないのが人間にとっては救いだろう。


 閑話休題。

 そんな苦戦した魔物はAランクでも中位から上位の強さだが、原型であるただのサソリ型もAランク下位の強さを誇る。


 ガルライディアの現状のランクはAランクへの昇進があるかどうかのBランク。

 多少の格上なので彼女の訓練にはもってこいと言える。


 だが、彼女の頭の中にはサソリ型の魔物のことはあまり無かった。


(エレクさんは人に魔法を撃つのに躊躇いがあるって言ってた。……じゃあ私はどうなんだろう…………?)


 彼女の両親や友には殺してでも止めると言った。

 だが、己は魔人となった友、ヒュアツィンテに殺意を向けられる、向けられただろうか?


 サソリ型の右左の鋏での振り下ろし、間髪おかずの尾での刺突を余裕も持って躱しながら関節部分に弾丸を叩き込みながら物思いに耽る。


 実戦だったらただの自殺行為だが、グラジオラスやセージゲイズに近接を鍛えらえ続けてきた彼女だからこその並列思考の練度。

 そもそも戦闘時の状況把握や魔力制御など並列的な思考が必須な魔法少女だが、ガルライディアはその中でも年季の割にはかなりの思考力を保有している。


 元々格上とばかり戦うばかりだった彼女ならではの対格上での余分な思考。

 普通に危険なので良い子も悪い子も真似はしてはいけない。


 原型のサソリ型の魔物の遠距離攻撃は速度の遅い魔力に由来する神経系の毒のみ。

 シミュレーターでは流石に毒までは再現されないが、そもそも基本的にその程度は食らいようがない。


 セージゲイズが打撃の合間に混ぜる魔力塊での攻撃の方がよっぽど恐ろしいし、速いし、タイミングがいやらしい。

 物理攻撃の鋭さもセージやグラジオラスよりも鈍い。


 総評、ぬるい。

 実際の命の取り合いなどは周囲の環境なども考えなければならないために物思いに耽るのは下の下ではあるが、ガルライディアは考えざるを得なかった。


 まず殺意とはなんだろうか?

 ガルライディアが今まで感じた中で一番近いのはクリスマスのときの魔人、ドミニクに向けた悪感情だろう。


 母をボロボロにされて彼女は苦しめと、市街地での不殺の戦闘用の魔法『展開エクスパンション』に全力で魔力を込めたのを覚えている。


 では、それをヒュアツィンテに向けられるだろうか?


(今は、無理、だろうなぁ……………………)


 諦めというか向け方が分からないようなそんな思いを胸にサソリ型を粉砕する。


「ふぅ……………」

「――ガルっち?」


 サソリを殺して、大きく息を吐いた少女の後ろからファルフジウムが声を掛けた。


 気を抜いた一瞬のせいで僅かに跳ねたのは彼女らだけの秘密である。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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