次の段階
ある地下施設、人口灯の青白い光に照らされている六人の魔に連なる者達。
全ての元凶と言っても過言ではない存在、ラウム。
それと『魔人同盟』の残り5名だ。
「――今回の話は以上だ。何か伝えたいことがある者は?」
面倒くさそうな雰囲気を隠そうともしないラウムの口調。
だが、それに文句を言う者はこの場にはいない。
いつものことであり、彼ら彼女らにとってラウムは恩人であるからだ。
だから、これは文句ではなく、提案だ。
「一つ、良い?」
最近被った猫が剥がれてばかりのヒュアツィンテが軽く手を挙げる。
「私を除く魔人の肉体には重大な欠陥がある。ここまではいい?」
ラウムは何を言うでもなく、無駄に高価な椅子に身体を預け無言でヒュアツィンテの様子を伺う。
ヒュアツィンテに許可は出していないが、そもそもこのような場合いつも彼女は無言であるために、『魔人同盟』の面々は恩人ではあるが、ラウムをいないものとして話を進める。
魔人達は軽く首肯する。
多かれ少なかれラウムから洗脳された後に聴かされた内容だ。
少なくとも、本人らの認識では自身の意思でそれでも魔人でいるのだ。
それがなんだと言うのか。
「それは魔力回路の性能が急激に増やされた魔力に追い付かずに、魔力が漏洩して起こる肉体の内部からの崩壊。――これを緩和することが出来るわ」
「――…………ほう……」
ヒュアツィンテの言葉に一際大きな反応を見せたのは、ラウムであった。
「私の魔法ならあなた達の魔力回路の強度を多少だけど向上させられる。方法の関係上あんまりじっくり出来ないからそこまで劇的な差じゃないわ。でも、その稼げた時間でより強く出来るようになるわ。それを繰り返せばあなたは短い寿命から逃れられる。――――どう?」
魔力回路、特に他者のものへの干渉はかなりの高等技術である。
人体の中では心臓に次いで魔力への抵抗力を持ち、心臓と同等以上に繊細なのだ。
ヒュアツィンテがシャーロットから魔人達の末路を知ってから数日しか経っていない。
その短時間で、他者の魔力回路への干渉を僅かにでも習得してきたのだ。
ヒュアツィンテの魔力制御はまだまだ拙い。
だが、それでも数日だけで高等技術とされるレベルにまで手を掛けたのだ。
魔法に精通しているラウムだからこその驚きであった。
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『魔人同盟』の面々はヒュアツィンテの提案を受けた。
彼ら彼女らはそれぞれが現代の在り方をひっくり返したい者達。
受けない訳が無かった。
ラウムは先程までいた場所から転移して、ある場所へと来ていた。
そこには、薄暗い光を放つ筒状の物体が数えきれない程に立てられた彼女の研究室。
この世界に来て初めて触れた科学の力。
それと元来持ち合わせ高めた魔法の力。
二つの融合は不可能を可能とした。
「……現状完全に調整済みの個体は4つ。試験運用は――」
口元を醜悪に歪ませるラウムの見つめる先にある筒の中には生気を感じさせない少女の姿があった。
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一応の強化イベント。




