悪だくみ
魔法局支部の監督が一人、清水 創美はラークスパーから提出された報告書を睨むように見つめていた。
(漸く見つけた『魔人同盟』の手掛かり。…………けれども、確実にこの座標には無いでしょうね。ただ、全く情報が無いよりはマシではあるか)
とは言え、情報を握られている前提で動かれたら余計に厄介ではあるが。
それはそれとして、だ。
彼女含めて、『魔人同盟』の動きには疑問を持つ者は多い。
その疑問は単純明快。
(何故、奴らは戦力を小出しにしている?………………男性にも魔力を扱えるようにするような人体改造や調整に時間やコストが掛かると考えるのが妥当か?)
だとすると、戦力の扱いの雑さが気になる。
ダイバーやドミニクらに受ける印象は、捨て駒。
コストや手間の掛かる存在を捨て駒とするのは中々理解しがたい。
とは言え、ラウムという存在は合理性を微塵も伴わない行動が確認されてきた。
ただ、そこを考え始めたら、もうどうしようもない。
「ドミニクへの尋問次第か…………。あとは――」
魔人が一人、ドミニクからの情報と魔法局全体で計画されているある事。
それらによってこの戦況は大きく変わる。
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『魔人同盟』が一人、ドミニクへの尋問は大して進んでいない。
ただ、やつの性格故か、口の軽さ故か、いくつかの情報を零した。
まず『魔人同盟』の当初の人数は7人。
ラウムを含めないその人数の内、分かっているのは、
アインス、(故)ダイバー。
ツヴァイ、シャーロット。
フュンフ、ドミニク。
不明、ヒュアツィンテ。
アインス、ツヴァイ、フュンフはドイツ語での数字の1、2、5に該当する。
順当に考えれば、1~7の数字が当て嵌められている。
全く情報のないのは残り3人。
またダイバーは死亡、ドミニクは捕まえている。
情報のない3人とシャーロットとヒュアツィンテ、それに加えてラウムが現状見えている敵戦力。
これらの対処策と情報が求められている。
もう一つ得られた情報は『魔人同盟』の魔力の在り方。
魔法少女の変身アイテムには初変身時に使用者の魔力の性質を、使用者の想いなどにそって染め上げる機能がある。
これによって、使える魔法の範囲は狭まるものの、魔法の出力は跳ね上がる。
その機能を応用したラウムによって、『魔人同盟』の面々は魔法少女同様に魔力の性質が偏ってるとのこと。
ダイバーは『発散』。
シャーロットは『流星』。
ドミニクは『支配』。
『流星』は魔力を加速させて弾として撃ち放つことに長けた魔力特性。
それ以外に特性に関して漏らしたことは『変成』と称されている特性の者が存在すること。
人数と魔力の性質が固定されているという情報は本当に重要だった。
ただまだまだ徹底的に潰すには情報が足りていない。
だからこそ、ラークスパーからの情報も大事ではあるのだ。
取り敢えずは、情報の確度をあげる段階であるのだ。
その方法はリスキーが過ぎるのだが。
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