不足
足りないものは、技術か言葉か
ガルライディアは、踏み込みと魔力放出により、飛び出した。
斜め上、それも木々に直撃する軌道で。
「ひぃっ」
自身の進行方向に太い枝が見える。
(これぶつかるやつだ!)
彼女は、咄嗟に両手を前へ。
ぶつかる直前に枝を掴み、枝を軸に半回転。
魔法少女だからこそ、出来る事である。
そのまま枝を足場にして、今度は、わざと跳び上がる。
ぶつかるかも知れないのなら、ぶつからない所を行けば良い。目指していたものとは違うけれど、今はこれで十分だ。
ガルライディアは、そう自分に言い聞かせるように何度も口に出した。
そうして、ガルライディアは、エレクを追う。
少なくとも、先程よりは近づいている。
「次!」
彼女は何度も飛び続け、彼我の距離を着実に詰めていった。
__________
エレクトロキュート・イグジステント(以下エレク)は、走りながらも時折後ろ、すなわちガルライディアを見ていた。
そもそも、ペースを合わせず走りだしたのはガルライディアの魔力制御がまるで駄目だと感じたからだ。
彼女の身体からは、常に微量の魔力が漏れ出ていた。
あれでは、簡単に魔物に察知される。
たとえ、漏れ出る魔力はいくら微量ずつとは言え、場合によっては命取りになりかねない。
だからこそ、エレクは魔法局への道すがら、魔法少女の必須技能の一つともいわれるものを見せて、多少なりとも覚えやすくしようと考えたのだが……。
「あれは、流石に予想外すぎる……」
うめくような声だった。
ガルライディアは木々を足場に跳んでいた。
それを確認したエレクは思わず声を漏らしてしまった。
「そうじゃない、そうじゃないんだ……」
決してガルライディアの取った方法は間違いでは無いのだが、エレクが使っていたものとは違った。
「最初に説明すれば良かったのでは……」
エレクは後悔した。そして、呆れた。自分の阿呆さに。
それでも、脚は止めず疾駆する。
結局、ガルライディアはエレクに追いつく事が出来ず、2人は魔法局に着いたのだった。
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