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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
罪の所在

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相談とはなんだったのか

忘 れ て た

 美勇は約束の時間の10分前に指定したファミレスに到着した。


 取り敢えず席を確保しようと店員の姿を探すその視線は、ある一点で止まった。


 まさか自分で呼び出した人が先に来ていたとは。


(これマジで失礼では?)


 冷や汗がだらだらと流れて背中に寒気を感じる。

 相手がこの程度で怒り散らすことは無いのは分かっているが、それはそれ。


 自分で呼んでおいて待たせてしまったのだから。


「すみません。遅くなりました」

「いえ、時間前でしょうに。こちらも少し聞きたいことがあったのでお気になさらず」


(それは無理)


 普段から声音が冷たい人なので余計に怖い。

 しっかり者で心優しい人なのは分かっていても、ぶっちゃけ怖い。


守美子(すみこ)さん、何頼みました?」

「一旦ドリンクバーと摘まめるものを少し」

「じゃあ、こっちもドリンクバーでいっか」


 流石に何も頼まないのは無しだ。

 さくっとドリンクバーだけ頼んで、守美子と二人分の飲み物を取ってくる。


 こういうところで率先して動かないと罪悪感で死ぬ。

 美勇のメンタルは割と雑魚なのだ。


「――それで、相談とは?」


 守美子は紅茶を一口飲みこんでから、淡々と切り出した。

 相談者が切り出すまで待つのは悪いことではないが、時間が掛かる。

 相談者の負担は増えるが。


「えと、あの…………なんていうか」

「はい」


 どう言えばいいのか分からない。

 視線が縦横無尽に泳ぎ回る美勇に対する守美子の視線は一切ぶれない。


「その、お母さんはカスに微妙に未練がありそうで……………………、それで」

「具体的には? 無理のない範囲でいいので」


 カスの部分だけ異常に声音が冷たいことには触れない。守美子としては触れる必要も、そこに興味もない。それはそれとして、離婚裁判じみたことになっている上で美勇がそう判断した理由は聞くべきだと考えた。


 そもそも、それが相談内容なのだろうし。


「こう、なんていうか……、父親としては終わりだけど、男としては…………みたいな」

「ふむ………。そう判断した理由は?」


 人間の側面の話だろうか。


 仕事をする人間として。

 恋人として。

 親として。


 全て同一人物でも見える面は異なる。


 それか――


「昔の姿を引きずってる感じが、言葉というか、雰囲気からみえた……って感じで」

「成る程。……………………」


 正直な話、守美子は答えに窮した。

 なにもかもが不得手な領域なので。


「私は恋愛的な面は微塵も分かりませんし。親というものも同様です。――素人目線の発言ですが、その感情はあなたには関係のないものだと思います」


 恋愛経験も無く、周りでもそのような話は出ない。

 親なんて以ての外だ。少なくとも一般的な親と異なっているのだろう。

 だからこその第三者的視点での発言なのだ。


「そりゃお母さまの感情を慮ることは良いことだと思いますよ。でも、それにあなたが縛られる必要は無いでしょう。お母さまのそれらは否定せずに、自分なりの感情に従っていいのでは、と。まぁ、無責任にも程がありますが」

「そー、っすか」


 炭酸飲料をチビチビ飲みながら話を聞いていてもコメントに困る。


 言いたいことは分かる。

 だが、そんなにはっきりと割り切れるものではない。


 守美子は本当の親を知らず、離婚なんてそれこそ分からない。

 だからこそ実態が伴っているとは言い難い発言ではあった。


「お待たせいたしました」


 コトリと守美子が頼んでいたポテトがテーブルに届いた。


「まぁ、ちょっと考えてみます」

「それが良いでしょうね。本当に困ったら清水監督にでもアポを取ってみたりはしていいかもしれませんね。時間あるかはわかりませんが」


 守美子の歴代の発言でも特に建設的ではない内容であった。

 美勇も美勇で発言にかなり困っている。


「食べましょうか」

「っすね」


 なんとも微妙な空気のまま二人はポテトに手を伸ばした。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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