深き業と遠き場所
pv数が増えてきて、嬉しい限りです。
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「我は、紫電の魔法少女 エレクトロキュート・イグジステント。雷を司る者。して、貴様は?」
ガルライディアは硬直した。
(なんで、そんな分かりづらい感じで話すの、この人っ)
内心、激しく動いているが。
「貴様の名を我に伝えよ、と言っているのだ」
再び声が掛かり、ガルライディアは再起動を果たす。
「は、はいっ。ガルライディアですっ」
「ふむ、貴様が話に聞くガルライディアとやらか……。
貴様は、何を司る者だ?」
再起動直後、ガルライディアに追い討ちが迫り来る。
「つか、さ、どる?」
司るとは、何かを支配下又は管理下に置く事。
意味を考えるても、結局意味が分からないガルライディア。
とりあえず、何か返さねばと、ガルライディアはまともな思考なしに答えた。
「いや、あの私神様とかじゃないんですけど……」
何故そのような返答になったのか、それは本人にも理解出来ない。
そんな発言に対する返事は、明らかな呆れを含んでいた。
「神で無かろうと、我ら魔法少女は皆それぞれ司っているものがあろうに……。何だったか、そう。貴様たちの言うところの魔力特性だ」
そこまで言われて、ガルライディアは漸く理解する。
普通に言ってほしい、と言いたいが言っても無駄だろうと諦めかけているが。
「私の魔力適正は『収束』らしいです」
「『収束』か……。あまり聞かぬな。……まだ甘いな」
ガルライディアが正直に答えたところ、エレクトロキュート・イグジステントは、なにやら考え込んでしまう。
エレク(以下略)の思案は思いの外長く続き、ガルライディアがおろおろとし始めた頃。
「ガルライディアよ、今宵用はあるか?」
突然、エレクは顔を上げ、ガルライディアにそう問いた。
「こよい」
「今宵だ。この後時間はあるのかと聞いているのだ」
ガルライディアはそこまで言われて、漸く理解が追いついた。
言い直すのなら、最初から分かりやすく言えないものか。
お願いだから、分かりやすく言ってください、とここまで切実に思ったことはガルライディアの人生(12年と少し)で初だろう。
しかし、考えても仕方がないと、ガルライディアは、宿題の有無やテストの予定などを考え、
「大丈夫です。……多分」
「重畳。では、我に着いて来い」
言うが早いか、エレクは走り出す。
(早めにお母さんに連絡しなくちゃ……)
そう思いながらも、ガルライディアはエレクを追って走る。
だが、
(は、速い!エレク走るの凄く速いっ。)
ガルライディアは、エレクに一向に追いつけない。
それどころか、差は開くばかり。
(でも、どうして?グラジオラスさんみたいに動き回るようには見えないのに……)
ガルライディアも決して近接型ではないが、それはそれとして、エレクの格好は、ローブに三角帽子。手には、長い杖がある。
明らかにガルライディアの方が身軽ではある。
身長差も5cmも無いため、(ガルライディア<エレク)歩幅の差も少ない。
では、何の差か。
ガルライディアは、離れ行く背を凝視した。
その目に僅かながら、しかしはっきりと紫電が映る。
(あれは、身体の周りにある……。いや、纏っている?)
さっき、エレクは己を紫電の魔法少女と名乗った。その前に彼女は電気を、雷を操っていた。
それはすなわち、彼女は現在魔法を使っていることを示している。と、思われる。
(魔法か……。まだ使い方知らないんだよなぁ)
残念ながら、エレクが何をしているのか大まかに分かっても、ガルライディアには実行出来ない。
(魔力放出しか無いけど……、今までと同じようだと上に跳んじゃうよね)
懸命に走りながら、ガルライディアは方法を模索する。
(放出する場所を変える?でも、やった事ないし……。
足元からの放出で進むには……。前に跳ぶには……)
そこまで考え、はっとする。
(そうか、前に跳べばいいんだから、イメージとしては、前の人に飛び付く感じでやればいいかな)
ガルライディアは走りながら、重心を前に倒していく。
見据える先は、遥か遠く。今もなお離れ行くその背に向かい、ガルライディアは飛び出した。
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