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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
罪の所在

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暗躍っぽい何か

 水曜日、一限目。

 チャイムの30秒程前に、結達の教室に担当教師が訪れた。


 一学期にガルライディア(ゆい)を祝いやがった(個人の感想)女性教師だ。

 担当科目は社会科、結のクラスの授業担当の中で一二を争う程度には好かれている先生である。


 なお、理由は緩いからである。

 緩くはあるが、授業及び休みの時間はキッチリかっちりしている事も人気の理由の一つだ。


「今日も現代社会の続きね、教科書156ページから」


 バブルの崩壊あたりからだ。

 現代と言うには大分年数が経ってしまっている。

 バブルの崩壊以降、日本経済は停滞を余儀無くされた。

 そんな世の中のなか、魔物出現により世から消えた物が存在する。


 その最たる例がテーマパークだ。

 広大な土地や大量の電力を必要とする娯楽施設なので、ほぼ最速で捨てられた。


 今と昔で出力に差はあれど、街を覆う大結界の半径は変わらず10km。

 面積的に約314km^2。


 そこに居住区や職場、学校から農地等まで入れなければならないのだ。

 テーマパークの入る隙間など無かった。


 切り捨てられたテーマパークに代表される様々なものは、後に政府主導で資源回収として、魔法少女を護衛として取り壊されてしまった。


 現在に残るのは、資料と余程作業が危険な位置にあった僅かな廃墟のみとなっている。


 政府はテーマパーク勤務の人々含めて、失業者を掻き集めて結界内の環境を早急に整えた。


 結界の性能を考慮に入れなければ、日本は僅か5年で壊れた都市機能を再生させた。


 また、魔石による発電方法が妖精の協力によって開発されてから、魔法少女・魔物数の多い日本の経済状況は右肩上がりである。


 資源の乏しい島国が輸送が制限された現在でも国の機能を保てていることは、そこに理由がある。


 チラチラと時計を見ながら授業を進めた社会担当は、授業時間終了1分前に徐に教材を片付けて始めた。


「ーーじゃあ、今日はここまでね」


 教師が出て行きチャイムが鳴った事で、教室の中にはざわざわとした喧騒が生まれる。


 そそくさと道具を片付けて、謡は教室を出ていく。

 追従するように陽子は小走りで謡を追う。


 完全に出遅れた結は、特に用があった訳でも無いので鞄から本を取り出した。



 _______________




「…………巻けたか」

「多分こっち来ても無いかも」


 人気の少ないところまで歩いてきた謡と陽子の二名は、適当な壁に寄りかかった。


「ーーで、本当にやる(・・)のか?」

「…………うん。良くない事なのは、分かっているけど」


 僅かに不快感を滲ませている陽子だが、謡の思いが分からないでも無い為に、遠回しにやめた方が良いと言うに止まっている。


 謡も謡で、やろうとしていることがどれだけのことなのかは重々理解しているつもりだ。


 だが、相容れぬ二つの感情の板挟みは如何ともし難い。


 なんとも重苦しい空気感に包まれた二人の心は、けれど、片方に僅かにだけ傾きつつあった。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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