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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
罪の所在

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悉皆激白 Ⅱ

 ダイニングテーブルには、いくつかの写真。


 どれもこれも画質は荒いが、僅かな音声記録を補強するのに、十分な証拠だ。


「お伝えした通り、白川 綾生は魔人 ヒュアツィンテと名乗り、この街に度々攻め込んでいます。魔法局としては、対象の捕縛、最悪の場合殺害(・・)を考慮に入れて、対処する予定です」


 あくまで淡々と。

 努めて平坦な声音で説明しきり、そっと息を吐き出す。


 最初には魔法少女と明かしたこととその事自体への驚きに染まっていた面々の顔色は悪化の一途を辿る。


 誰も口を開かない、開けない。

 嫌な寂静が空を満たす。


「………………事情聴取等の観点としては捕縛が望ましいのですが、困難を極めます。あちらの抵抗が激しい場合は最悪も考慮に入れておいて下さい。……それはそれとして」


 白川夫婦の見開かれ乱れた瞳が、ぼんやりとガルライディアを映す。


「個人的には、ヒュアツィンテを、綾生を、殺したくはありません。既に一度試みておりますが、対話で解決するのならそれが望ましい。皆さんが彼女に伝えたい事があれば、伝言という形で伝えます」


 ガタガタと跳ねる椅子。

 逸る面々を手で制する。


「ただし、です。それを戦闘中に綾生の動揺を誘う為に利用する可能性があります。申し訳ありませんが、よく考慮いただけると幸いです」


 堂々と娘や友への伝言を利用すると宣言する。

 間違っているなんてことは百も承知だ。


「……どうして、そんな…………」

「非道なことだとは私自身誰よりも思っています。――ですが、綾生を殺さずに捕まえられる確率が僅かにでも上がるなら迷わず、利用します」


 和佳奈の言葉にならない部分に被せて綴る。

 己の為すことは既に決まっているのだ。


 その覚悟を、誠意をここに示そう。


 白川 綾生に対して、全霊を以て対処に当たる。

 そうでなければ、魔法少女を、何より友を名乗れない。


 ならば、使えるものは何であろうと使う。

 決して穢してはならぬものも全て。

 かなりリスク(・・・)も大きいのだが。


「…………無茶な事だとは分かっているが、我々に話す機会は、無いのだろうか」

「完全な無力化が最低条件になりますので、捕縛に成功しないことには、なんとも…………」

「そう、だろうな。だから結くんも伝言という形を取るのだろうし」


 彰人本人、自身の発言が無茶振りの権化なのは重々承知。

 だが、聞かずにはいられなかった。


 死の危険が伴う以上、我が儘など言ってはならない。

 特に娘の友人には。

 未だに、彼女の嬉しそうな友達自慢が脳裏に焼き付いている。


「…………結ちゃん、私伝言はいいや」

「こっちも、良い」


 友人二人、特に謡が言うとは予想していなかった。

 そもそも全員言いたいことの一つや二つはあると思っていた。


「どうして?」

「自分で伝えるから、結は目の前の事だけ考えてりゃ良いの。正直、伝言の事考えながらじゃ、キツイんだろ?」

「………分かった」


 伝言で綾生の感情がどう動き、戦況にどう響くかが分からないのだから、場合によっては劣勢になりかねない。感情のままに暴れるようであれば、危険なんてものではない。

 確認されている範囲の魔力でさえ、一切の余念なく振るわれた場合、待っているのは死だ。

 陽子の言う通り、もとより些か厳しい話だった。


 それはガルライディア、結自身良く分かっていた。


 グラジオラスの斬撃を物ともしない圧倒的密度の魔力の壁。

 槍を変化させての変幻自在の攻防。

 魔法によると思われる肉体変化。

 近接は荒削りな印象を受けるが、だからこそ、未だ成長の余地を大きく残す。


 それを打ち抜くには全霊を以て戦う必要があり、そもそも、現状では勝てるかも怪しい。


 正直、余裕は無い。

 ほんの一瞬、僅かな隙に捕縛するなんてことは夢物語としか言えない。


「……そういう話をされると、頼みにくいのだけれどね」

「私達からは、一つだけ」


 若干気まずそうに、夫婦は目を泳がせながらも、結と目を合わせた。


「「――――」」


 異口同音。

 結はその言葉を胸に刻む。

 忘れぬように。

 深く、深く。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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