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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
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集いて砕け Ⅸ

 クリムゾン・アンドロメダの放つ全力の左ストレート。

 それは、空間を支配した。


 万物は吹き飛び、万象は蹴散らされる。


 中心に残れたのは、彼女一人。


 最早動くことも儘ならぬアンドロメダただ一人だ。


「――グラジオラスさん…………!!」


 ガルライディアの絶叫に等しい呼び掛け、それだけで意図は伝わった。


 出せる限りの出力で爆心地へ突っ込んでいく。


 グラジオラスに一瞬出遅れて空を翔ける者が一人、同じく吹き飛ばされた『ハルトクレーテ』及びフュンフに吶喊。


 刃を展開したまま、魔翼に魔力を込めて一気に加速する。


「――――ッッ!」


 ギャッ、と軋むような音を立て、『風切り羽根』は未だ健在の魔力壁に拒まれる。


『バードストライク』を三発放ちながら、ラークスパーは即時後退。


 止まったのは一瞬、認識を置き去りにする程の速度でまた攻勢に出る。


『魔力壁、弱くなってる』


『念話』で端的に繋いで、徹底的に攻撃する。


 せめて、アンドロメダが退避する時間を稼ぐ為に。


 グラジオラスはそうそうにアンドロメダを即席の障壁製タンカに乗せて、周りを緩めに更なる障壁で固定。

 障壁自体を動かす事で、セージゲイズの元まで一気に戻る。


 ガルライディアとファルフジウムの両名も『ハルトクレーテ』の殲滅の為に、再度接近する。


『ハルトクレーテ』は自身の前方に、数多の魔力塊を形成し、それらを出鱈目に撃ち放つ。


「――チッ……」


 ヒットアンドアウェイを繰り返していたラークスパーは全力回避を余儀無くされる。


 だが、それでも突っ込んでくる者はいる。


 紅を纏い、最小限の動作でひたすらに進む。


 地面を浅く抉りながら迫る魔力塊を、軽い跳躍で躱す。

 そこを狙い澄ましたかのような殺意の連打。


 それら全てを瞬間的な魔力放出による加速で避けて、脚が地面に着いた瞬間に、更に加速。


(あるチビ、速ぇ……。少ない放出量であの加速、ダイバーでも出来ねえのに――!)


 思考はさせない。

 生かす気も無い。


 驟雨が如き魔弾が着実に弱まった魔力壁を削る。

 時折、『貫通ペネトレート』をフュンフに撃つのも忘れない。

 戦況的に当たれば良いとは思っている。

 が、純粋にムカつくので風穴開けとも思っている。


 フュンフのような何かを操る能力持ちが手下と共に戦う際の利点は多くある。


 ガルライディアは、その中でも最も大きなメリットは、手下を戦わせて、自身は安全圏から敵戦力の分析等を行える点だと考えている。

 攻撃への対処・戦闘法・弱点、それらを観察出来るアドバンテージは相当に大きい。


 また、フュンフは命令による強化などを行う。


 ならば、一番簡単な妨害は視界を潰す事だろう。


(多分、あの砲撃は強化魔法があるから出来るやつ。…‥少なくとも、威力は下がる)


 魔力出力自体を強化していると予測出来ることもあり、ガルライディアは兎に角命令を行いづらい状況にフュンフを入れる。


 ガルライディアへの攻撃が一瞬止む。

 彼女の全神経は、一点に向けられた。


「『徹甲榴弾アーマーブレイク』」


 カチリとスイッチを入れる。

 放つ魔弾は硬い防御を貫く一撃。


 それを『ハルトクレーテ』の甲羅と身体の隙間に撃ち込む。


 ただの肉体が同個体の甲羅程硬い訳が無いのだ。


「――――――!!」

「――ッオイ、どうした……?!」


 痛みに叫び悶える。

 段々と化けの皮が剥がれて来ているフュンフの意識が魔法少女達から逸れる。


 その瞬間を待っていた。


 ――『Nova・Brave・Blade』!


「鳳凰斬」


 黄色の閃光が一振りの直剣に収束する。

 風の剣を中心に大気が渦巻き刃と化す。


 一閃。

 二振りの刃が挟み込む様にフュンフを襲う。


 互いにかなりの魔力を込めた斬撃は、貧弱な魔力壁を突破して、フュンフの身体を切り裂いた。


「――アッ………………!」


 あまりの痛みに声も出ない。

 鮮血が男を彩る。


 けれども、彼女・・に待つ気や遠慮、容赦などまるで無い。


「『展開エクスパンション』――!!」


 苦しめ。

 死ぬまで、与えてきた苦しみに悶えろ。


 母親を傷つけられたガルライディアの怒り。


 その一撃は、フュンフの体内を腹部から侵し、胃と肝臓を完全に破壊する。


 情報を得るという観点でもかなり有用な生け取りという状態。

 だが、それは今回ばかりは悪手だった。


 口と傷から悍ましい程の鮮血を散らしながら、フュンフはハルトクレーテから落ちていく。

 けれども、それで止まるのなら、魔人になど堕ちていない。


「『全部、壊ぜェ…………!』」


 薄れゆく意識の中、フュンフの最後の命令が『ハルトクレーテ』に確と届いた。


お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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