集いて砕け Ⅷ
アンドロメダの『起源魔法』が炸裂する。
その間にも上空から魔物とラウムが迫っている。
一瞬のアイコンタクト。
セージゲイズに視線を送ったエレクは上空に身を晒す。
「扇電招雷、迸れ……!!」
一気に雷撃を放ち、地上に程近いモノ以外の魔物を一掃する。
残党は周りに任せる。
「奔れよ、雷光。蒼穹は瞬く!」
収束した紫電を放って、視界を塞ぐ。
思い切り跳び上がり、加速していく。
迫り来る衝撃波の数々を半ば強引に突破して、エレクはラウムと同程度の高さで停止した。
正負の電荷による反発だ。
面倒なことこの上無いが、エレクは自身の靴に正電荷、足元に負電荷の力場を展開して、更にその反発を強化する事で、擬似的にだが空中での歩行を可能とした。
「――ほう……。お前が自分から飛び込んでくるとはな」
(空中に止まった、か…………。雷魔法でやるとはな。流石に方法は分からんな)
「さっさと帰れ」
(砕けた結界は段々と修復され始めている。……なら、前よりも低火力の魔法でも突破出来るはず)
互いに手を止めていたのは数瞬、練り上げた魔力を振るい、幾重もの花を咲かせる。
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「結、ごめんね」
「――――」
何故か結――ガルライディア――の下へはっきりとその声が届いた。
(魔力砲の対処――『爆裂』は駄目。巻き込む。『衝撃』も…………!)
「『不落の白亜』」
グラジオラスがアンドロメダの前方に絶えず障壁を展開し続け、魔力砲を僅かに堰き止める。
「聞こえない!! 後でにして……!」
ガルライディアは強引にアンドロメダの横に立つ。
「『起源魔法』――『一条乖離した紅の慟哭』ィ!」
このままでは、アンドロメダが保たない。
ガルライディアは良く現状を理解していた。
だからこそ、無茶をする。
二つのマガジンが合わさった大きなマガジンの中の収束魔力弾14発、全てを一撃に注ぎ込む。
彼女では未だ操れない膨大な魔力が暴れて、身体中の魔力回路を蹂躙する。
だが、知ったことでは無い。
アンドロメダが遺言のように話し出した事実さえも掻き消すように、ガルライディアの象徴は世界に響いた。
真っ向から魔力砲とぶつかった魔弾は、しかし、『ハルトクレーテ』に届く前に砕け散った。
が、確実に大きく勢いを削いだ。
それでも、まだ、足りない。
また、数センチ。
アンドロメダの足が下がる。
拳を振り切る前に魔力砲と衝突させている彼女は純粋に出力負けしている。
びしり、と右腕が何箇所も裂ける。
鮮血は吹き飛び、彼女の頬を濡らす。
「――今まで、逃げて来たの。現実から、あなたから……!」
「もう良いよ――!! 早く、退いてッ」
良い訳あるか。
泣きそうな娘の声さえ無視をして、アンドロメダは全力を出す。
どのみち、出血量的に戦闘行為は長く出来ない。
ならば、せめて全霊を以て娘達を守る。
魔力を込める。
嘗て無いほどに。
左腕が赫灼の内に隠されて、その輪郭を壊す。
現実から目を逸らした。
世界なんて壊れろとさえ願った。
けれども、
(もう逃げてはいられない。もう――)
失いたくなど無いのだ。
逃げる事など許さない。
だから、
「――こういう時位、母親らしいことさせなさいよーーーーッッ!!」
インパクト。
引き絞った左腕を解き放つ。
魔法でもなんでも無い。
ただ魔力を込めた一撃は、しかし、完全に魔力砲を打ち破り、『ハルトクレーテ』を大きく後退させた。
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