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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
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集いて砕け Ⅳ

 フュンフの一言。

 魔法少女達にそれを上手く聞き取れた者は居なかったが、彼の口が動いたことは確認できた。


 しかし、こう(・・)なるとは思えなかった。考えもしなかった。


「……なに、これ…………」


 ガルライディアの小さな言の葉。

 彼女らの眼前には、周囲には、無数の瓦礫が散らばっていた。


「ふぅ……、危なかったぜ。乱暴さんね、子猫ちゃん達」

『半径200m程が吹っ飛んだわ。二度と撃たせないようにするわよ』


 誰もフュンフの気色悪い態度に物申さない。

 そんな余裕は、彼女達には無い。


「――やりますよ」


 いち早く立ち上がったグラジオラスは、再度白刃を構えた。自らを鼓舞するかの如く、不敵な笑みを無理に浮かべて。


 それに釣られるように、皆立ち上がる。


 敵を倒さぬ内は、己に行く場所など無いのだ。


「…………無視かよ。オレちゃん悲しいなぁ。――ま、良いや。『撃――」


 フュンフの何度目かの命令。


 その寸前、金と真紅が降り注いだ。



 _______________




 彼女は考えていた。悩んでいた。

 どうしたら、ここから抜け出せるだろうか?と。


「拙いわね…………」


 自身と逆方向の人の波。

 それに押されて、目的地へと一向に向かえない。


 流石に、蹴散らすのは駄目だ。

 本来なら自分が異端(・・)なのだから。


 魔物に向かって進む(・・・・・・・・・)のは、魔法少女か馬鹿位だ。


「――馬鹿は馬鹿らしく、動くとしますか」


 シャツ越しに首から下げたドッグタグを握る。


(…………懐かしいわね――)


 小さく息を吸い、止めた。


「『我が魔力、我が願い、我が怒り。赫灼を此処に示す――』」


 火の粉が上がり、周囲の大人数名が彼女の方を呆然と見つめる。


 その声音を、その祝詞を、嘗て聞いた事がある。


「『吹き荒れ、固まり、迸る』」


 魔力が言葉通りに彼女から迸る。

 地を這い、赫の風と化す。


「『臥薪嘗胆。鬼哭啾々』」


 気が付けば、人が周囲からいなくなっていた。

 好都合。

 彼女は、両脚に魔力を込めて、大きく跳躍する。


「『この慟哭は全てを覆い、全てを潰す』」


 赫灼と共に、足を付けたビルを陥没させる。

 数多の窓硝子が砕け散り、辺り一帯に舞う。


 風圧に白地の特攻服と長い鉢巻きが靡く。

 陽光がガントレットやブーツを照らし、銀色の光を返す。


 変身を完了した彼女は、踏み込みと魔力放出を以て、遥か上空、高度5km程まで一気に飛び上がる。


 目標は勿論金髪糞女だ。


「――カアァァッ!!」

「――チィッ…………!」


 咆哮一撃。

 障壁を砕く。


(空間断絶を魔力を纏っただけの拳で破る力がまだ残っていた(・・・・・・・)か、化け物め…………!)


 魔族(化け物)が考えることでは無いが、ラウムが自身から相対距離1mに球状に展開していた防御を紙切れの如く粉砕され、さながらアイアンクローのように頭を掴まれる。


「オオオッッーー!」


 両脚と片腕。その振りで生じた風圧と魔力放出で、一気に下降する。


 ラウムは魔法を放てない。

 生半可な魔力量ではこの魔法少女の前では魔法に成り得ない。


 空間干渉なども通用しない。

 遠距離から空間を繋げようとも、自信が穴を潜る前に、烈火の如きその魔力で干渉が乱れる。


 叩き落とされる。

 ラウムに即時で出来るのは、落下予測地点に空気の層のクッションを設ける程度だ。


『ハルトクレーテ』(その上のフュンフ)と魔法少女達がいがみ合う、その中心に諸共落ちた。


 赫炎と暴風が吹き荒れて、魔法少女達が再度吹っ飛ばされるが、そんなことは些事だ。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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