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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
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聖夜の準備

 日付けは、12月の24日。

 クリスマスイブと称されるその日はどこもかしこも浮き足立つ。


「ーーお父さん、これ(・・)こんなにいるかな……?」

「ちょっと調子に乗ったかもしれない。数年振りに家族全員でクリスマスパーティー出来るからって、やり過ぎたね」


 余りに余った大量の飾り物を前に、加集親子は頰を引き攣らせた。


 昌継は24、25の連休、香織も24半休の25全休と二人がここまで揃う事など、昌継の言葉通り数年振りだ。


 香織が午後になって帰って来るまでに、様々な準備を終えておこうとして起こした行動だったが、開始数時間で後々の部屋の片付けが地獄と化す事が確定した。


「……まぁ、あれだよ。残りは来年以降に回そう。無理に使う必要は無いさ」

「そうだね。……お父さんの方は?」


 昌継が行っていたのは、夕飯用の下拵え。

 傍から覗き込んで来る結にも見えやすいように、少しだけ近づける。


「一応、フライドチキンとかの下味はつけてるから、夕飯ごろにはしっかり味が付いていると思うよ」

「おぉ…………!」


 普段に増して、結のテンションが高い。

 魔法少女として戦いに身を置いていても、そこは普通の小学生と何一つ変わらない。

 頭を撫でようとした昌継だったが、手が汚れている為に、即時飽きらめる羽目になった。



 _______________



 ーーもし時間取れるなら今度話さない?

 ーーお父さんがいない時間帯ならいつでも良いから。

 ーー良かったら、日時メールして。


「……待って、ますーーと」


 カタカタと慣れた手つきでキーボードを叩き、美勇は母親宛てのメールを書き上げていく。


 ガルライディア(ゆい)が眩しく見えた。

 自分も出来るならそう在りたかった。


 だから、


「まずは第一歩、だね」


 さて、椅子から勢い良く立ち上がった少女は、コートに手を伸ばす。

 時刻は10時半を過ぎた所。


 今日の昼ご飯はチキンにしよう、そうしよう。


「七面鳥とかって売ってる店あるのかな……?」


 気分は冒険家。

 足取り軽く外に出た彼女は、ある事に思い至った。


 ーーそう言えば、七面鳥のビジュアルが分からないや。


 と。



 _______________




「ーーコンビニでもクリスマス系の商品売り切れてたからって、家に来るかしら」

「おば……紫さんに、誘われたからね」


 足りない物を買いに行った母親が、一人追加を連れてきた。

 なお、おばさんと言うと怒られるようだ。

 明のジト目が美勇を刺す。


「……まあ、良いのだけど。ご飯の予約とかはしていないのでしょう?」

「無い無い。だから買いに出たんだし。…………と、言うか、さ」


 何か無駄になる物が無いのなら、良し。

 言外に、けれども実に分かりやすい姉貴分を軽くあしらいながら、ずっと気になっていた事を聞いてみる。


「鳴音はあれ、何やってるの?」


 何か箱状の機械のすぐ側で、ノートパソコンを頻りに弄る鳴音を横目に、本当に何をしているのか皆目見当もつかないからこその質問。


 真横にクリスマスツリーがある事が余計に分からない。


「ツリーの装飾に点滅するライト群があるじゃない?」

「……あぁ、うんあるね。それが?」

「それをゲーミングカラー、七色にしたいらしくて…………」


 更に脳内の疑問符が増えた。


「言い回しにはツッコまないけど、あのライト色そんなに出るんだ」

「出来るからやっているのでしょうけど、今は制御用のプログラムを自作してるようね」

「なんか、鳴音変な方向に振り切れたね」

「割と元々そう言う面はあったけれど、この頃は特によく見るわよ」


 方向性は兎も角として、鳴音が生き生きとしている様子を一瞥した後に、少女二人は目を見合わせた。


「ーー私は料理手伝って来るから、適当に寛いでなさい」

「御相伴?に預かるんだし、私もやるよ」

「どうして疑問符付いているのよ。それで合ってるわ」

「なら良かった」


 まだまだ調理は始まったばかりのようだが、問題は無い。

 しないが基本的な料理は熟る者と、自炊を毎日一回は最低でも行っている者だ。

 追加戦力の能力値は子供の「おてつだい」とは桁が異なる。


 なお、キッチンの容量が足りなかった為に、美勇は退かされる事となった。



 _______________




 そこは、街の中心部に程近いあるオフィス。

 その三階に位置する部署にて、新人とその指導役が資料片手に話していた。


「……大体今回の仕事で必要なものは揃いましたよね?」

「そうね。それはこの部署では必要物が多い類の仕事だから最初は大変でしょうけど、まあ、頑張りなさい」

「はぁい。……加集先輩って午後からお休みでしたっけ?」


 羨ましげに聞いてくる新人から見て、指導役ーー香織ーーのテンションが一気に上がった。


「まあね。夫と娘がクリスマスパーティーの用意をしてくれているようなのよね」

「あぁ、良いなぁ……。私もそんな家族欲しいです。旦那様のお知り合いに丁度良い感じの人いません?」

「さあね。夫婦だからってお互いの交友関係全て把握してる訳じゃ無いのよ。合コンにでも行きなさい」


 一切躊躇無く上目遣いで聞いてくる様子に呆れつつ、淡々と遇らう。

 そろそろ帰宅時間なのだ。


「ええ……? 合コン昔無理矢理お酒飲まされかけて苦手なんですけど」

「我が儘ね。……もうマッチングアプリでも何でも使いなさいよ」

「それもなんか嫌です。と言うかーー」


 瞬間、硝子の割れる音がした。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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