表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
回帰

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

184/265

過去の傷

 泣き声が聴こえる。


 部屋に甲高く響く。


 けれども、それ以上に怒号がその部屋を支配していた。


 狭くボロボロなその一室は、戸籍上の家族計3人が暮らすアパートのリビングだった。


 テーブルには大量のビール類の缶。

 床に散らばる雑多なゴミ。

 汚れたまま放置され、異臭すら放つキッチン。


 怒号を飛ばすは、一家の大角柱(笑)。

 なお、実際には笑えるような状況下には無い。


 泣く少女ーー小学校低学年程度であろうか--に手を上げ、足蹴にし、ゴミを投げつけ、物を投げる。


 リビングに程近い寝室からは啜り泣く音が聞こえる。

 その女性の状況も少女と似たようなものだった。


 そこかしこには痣が見える。

 けれど、まだ彼女はマシな方だ。


 少女の身体には幾つかの斑点、有体に言えば、円形の火傷跡が残っている。


 家に金を入れない夫に逆らう事は出来ない。

 恐怖に動かぬ身体で何とか自身と娘の生活費を稼ぐ日々。


 彼女の精神は磨耗し切っていた。



 _______________





「…………ん、んん………………」


 蕗原 美勇の朝は遅い。


 のそのそと起き上がり、ふらふらと壁に頭を打ちつけそうになりながらも、シャワールームへと入っていく。


 自身の身体を打つ温水に段々と目が叩き起こされていく。

 シャンプーを取ろうとして、ふと前を見た。


 そこには一枚の若干燻んだ鏡があった。

 美勇の怠惰が招いた燻みだが、今注目すべきはそこじゃ無い。


「ーーやぁっぱり、結構分かるなぁ…………。あんの糞野郎、乙女の柔肌になんてもん付けてくれてんだか………………」


 鏡に写ったそれを、つつ、となぞる。

 垂れる文句も伝える相手が居なければ、虚しいだけだ。


「……しゃーない。娘から近づいてあげますか…………!」


 誰に言うでも無く、強いて言うなら自身に言い聞かせ、彼女はシャワールームから飛び出した。


 決して着替えを持ち込むのを忘れた訳では無い。

 訳では無いのだ。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ