探索結果
魔力の羽で空を強く叩き、一気に加速する。
ある程度の高度までに達したのなら、そのまま滑空に移行する。
それを何度か繰り返して、漸く見えてきたのは、勝手知ったる生まれ故郷。
けれども、そこに見慣れた大型ショッピングモールの姿は無かった。
(……あぁ、私が出発してすぐに、壊れちゃったんだっけ? 建ってから結構経つし、このご時世で良く保った方かな…………?)
物悲しさを覚えつつも、魔翼を一打ち、急降下を始める。
地面スレスレで、もう一度翼を羽ばたかせ、今度は急減速。
そのまま着地する。
「ーーふぅ、まずは報告しなきゃ」
変身を解き、街にこっそり入っていく。
彼女の名は、浅見 亮歩。
またの名を、踏査の魔法少女 ラークスパーである。
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「…………そう、全体としては魔物の出現率に大きな変化は無いようね」
「ですね。まぁ、ちょくちょく局所的に短時間で、とかはあるようです。はっきり言って、そう言うイレギュラーが最近は多過ぎます」
亮歩は、まず魔法局支部の清水 創美の下へ、今回の調査結果の報告へと来ていた。
「魔人同盟とやらの仕業かしら? ラーク、各街でそう言う話は聞けた?」
「あった、と言う程明確なものは。けれど、一、二度、上空に小さなモノを見たと言う話がありました」
魔人同盟の内、ラウムは空間に干渉し、ヒュアツィンテは羽を生やすと報告があり、少なくともそれら二種は最低でも考えられる。
実に厄介な事だ。
なお、創美は亮歩の事を「ラーク」と呼ぶのがデフォルトだったりする。
「ーーと、まあ、口頭での報告はこんな感じで。後で報告書に纏めます」
「ええ。宜しくお願いするわ。…………これ支部長にどう伝えようかしら」
魔法少女の監督役は、魔法局並びにその支部のトップでは無い。
実際には、最終決定権を握っているのは長である。
ただ、魔法少女の直接の上司は、監督役である為に、殆ど関わりは無いが。
なお、魔法少女達からすれば、長達はそこまで関わりがない上に仕事内容が分からないために、実質的なトップは監督役という認識だったりする。
「報告書書けたら、先輩の下にでも挨拶に行きますかね? 結ちゃんの様子も久しぶりに見たいですし」
「貴方の場合は、特に街にいる事が少ないからねぇ」
「ですねぇ…………」
雑談もそこそこに、亮歩は創美の仕事部屋を辞する。
街にさえあまり居ないのに、実は存在する自分用のデスクに向かおうと、廊下を歩く彼女の視界に、ある二人が入った。
珍しい組み合わせのようで、そうでも無い二人組は創美の下へ向かうようだ。
「……なんか面白そうだね。報告書さっさと書いてしまいましょ」
とんでもない量の書類仕事を前にして、己を奮い立たせるように軽い調子で、彼女は伸びを一つ、廊下を歩いて行った。
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