名状し難きマシンガン
主人公よりも周りが濃い
サブタイ今までで一番気に入っている(どうでもいい)
結は学校に到着し、教室に入った。
「おはよう」
挨拶をしても、皆各々の会話に夢中で気がつかない。
いつものことではあるので、結は気にせず席に向かう。
「あ、おはよう。結ちゃん、もう具合良いの?」
結の後ろの席に座って本を読んでいた、
眼鏡を掛けた少女―和泉 謡が、結に気付き声を掛ける。
「うん、もう大丈夫だよ。うたちゃん、何読んでるの?」
"うたちゃん"とは友人間での謡の渾名だ。
本人は当初は恥ずかしかって文句を言っていたが、もう慣れたのだろう。そこには一切の反応を示さなかった。
諦めたの方が近いかもしれないが。
「これはね、伝記だよ。といっても、そんなに昔の物じゃないけどね」
「へぇー、どんな人のお話なの?」
「ある魔法少女の人のお話だよ」
「ええっ!」
純粋な興味からの質問。
ただし、その返答は予想だにしないものだった。
「……?どうしたの、そんなに驚いて」
「な、なんでもないよっ」
どうやら反応が大きすぎたらしい。
変に思われた。反省、反省と結は話を続けた。
「それで、どんな魔法少女さんなの?」
疑るような視線が謡から送られる。
「どうしたの?」
「いや、結ちゃんが魔法少女の話に興味を持つの珍しいなって」
確かに今まで結は魔法少女に大して興味はなかったが、魔法少女になってからは、積極的に情報を集めるようになった。
「調べ出したら、面白くなっちゃってね……」
結は言葉を濁した。友人に嘘を言うのは心苦しいものがある。全くの嘘ではないが。
だが、それだけが理由では無い。その理由は……、
「うんうんっ。分かるよっ、その気持ち!」
この謡の食いつきようにある。
「魔法少女はね、ゲームとか物語とかみたいな服装をしてるけど、それは変身している時にずっと使い続けてる魔法でそうなってるんだって。あ、後それから、その使い続けてる魔法で物理のみでの攻撃に対して無敵に近いらしくて、さらに魔法少女の正体がバレないようにするための魔法もあるらしくって、それで魔法少女たちは誰一人として一般人にバレたことがないんだって。で、私が読んでた伝記の魔法少女の名前はアスタークレセントで、正確には断絶の魔法少女 アスタークレセントなんだけど、この人は現在の魔法少女の最強の人で―」
マシンガントーク、此処に極まれり。
(人は見かけによらないって、こういう時につかうのかなぁ)
眼鏡にゆるふわ系の見かけでマシンガントークを繰り出す謡を見ながら、結はそんなことを考える。
謡は、授業が始まるまで止まることはなかった。
今日の結のクラスの一限目は歴史だ。
20代半ばくらいの女性教師が教室に入ってきた。
「授業を始めましょう。日直さん、号令を」
日直が号令を掛け、教師が話し始める。
「昨日のニュースで、この街で新しい魔法少女が生まれたって話があったんだけど、皆知ってるかな?」
(どうしてその話になるのっ⁈)
結の内心とは別の理由で教室は騒がしくなる。
知っている者が大半のようで、それを確認した教師はこう続けた。
「今日はそれを記念して……」
(記念なんてしなくていいですっ)
「魔法少女に関する歴史についてやるよ」
その言葉でさらに教室は煩くなる。
男女問わず、楽しみにしている者が多数。
むしろ、この状況下では喜んでいない方が少数派だ。
なお、結はこれまでとは違う理由で少数派側にいる。
少し、気になり結は後ろを振り返る。
後ろが一際騒がしいように思えたからだ。
が、すぐに視線を前に戻した。
何かいた。
戦闘中のグラジオラスと同レベルに見てはいけない感じのが。
そうして、授業は始まったのだった。
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