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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
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古今 Ⅱ

(ああぁあ、恥ずかしい。恥ずかしい……!)


 少女は、先程の自身の行動を悔いていた。

 いくら何でも、知人の母に抱き付くのは無いだろう、と。


 美勇を狙った男共は、香織に伸されて数分もしないうちに到着した警察によって、連れていかれ、多少の事情聴取の後に、香織と美勇は解放された。


 なお、見方によっては強姦未遂とも取れそうだったが、警察官と香織の判断でそれについては美勇には隠された。


 今の今まで色々に押されていて、全ての方が着いたのは、約二時間後の事であった。

 だからこその時間差攻撃が美勇を襲う。


 香織は、現在美勇の座っているベンチのすぐ後ろのコンビニで飲み物を買っている為、美勇は好きなだけ悶える事が出来る。


「……はぁ、どんな顔しろと」

「ーー前に会った時と同じ感じで良いんじゃ無いかしら?」


 びくりと身体が跳ねた美勇の手に、ホットココアが優しく落とされた。


「まあ、何はともあれ、無事で何よりよ」

「あ、ありがとうございます。……以前不良だった的な話は伺ってましたが、それにしてもお強いですね」


 貰ったココアを早速開けながら、美勇はかなり気になっていたことを切り出した。


 先の香織の動作は、ただただ元ヤンで喧嘩慣れしているからでは説明の付かない程度には磨かれたものだった。


(グラジオラス(グラさん)みたいな天性のそれだったら、違うかもだけど)


「喧嘩の売り買いをするような馬鹿も痛いのは嫌よ」


 天然物の対人兵器じみた同僚を思い浮かべていた美勇に対する返答は当たり前だが、少し予想外なものだった。


「すみません、なんかそう言うの気にしない人達なのかと……」

「否定はしないわ。私もそうだったしね。でも、私の場合はちょっと特殊だったのよ」


 特殊とは?

 そう問い返した美勇の目には、昔を懐かしむような、それでいて何かを必死に押し殺しているような、そんな顔が写っている。


「小、中、高と一緒だった幼馴染がね、私が少しでも傷を付けてくると、それはまあ、怒りに怒って。そんな状態だから、攻撃は全部処理する事にしたのよ」


 ナチュラルに実行困難な事を言っているが、そこは頑張ってスルーを決め込む。


「さて、と、帰りましょうか。タクシー呼ぶから、少し待っててね」

「……あ、はい。お願いします」


 タクシーが来るまでの少しの時間、美勇は若干気になる事に思い至った。


「今更なんですけど、私相手に微妙に口調安定しないのは、何でですか?」


 普段通りと小さな子供をあやすような時とが混同したように、彼女は感じたのだ。


 美勇の問い掛けに、数瞬瞬きを挟んで、香織は自嘲気味に話出した。


「結が本当に小さい頃の事を思い出したから、かしら。…………とは言え、少し前まであの子の事、仕事にかまけて蔑ろにしてしまっていたから、小さい頃のイメージのままなのかもしれないわね……」


 職場での立場が上がり、やる事が増えた。

 けれども、それは子供を放置する理由にはならない。

 それをしてしまった後に、今の彼女達があるのだ。



 _______________



 ーー11月3日、変速の魔法少女 エーデルギアが民間人を庇い、亡くなった。


 ーー前述の通り、彼女とクリムゾン・アンドロメダは無二の親友であった。


 ーー親友の死、その際の怒りをもとに『起源魔法』を会得し、彼女は絶潰へと至った。


「……友達、か…………」


 彼女は失った痛みは知っていても、怒りに覚えは無い。

 知っているのは、後に残った無力感と喪失感のみ。


 では、彼女が今後目の前で友を殺されたのなら、どうなるのか。


 それは、彼女には分からない。



 否、分かろうとしない。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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