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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
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年の瀬、重ねて Ⅱ

「『変身』」

「『極光チェンジ』」


 瞬間、紅と黄の閃光が爆ぜた。

 周囲が響めき、そこかしこからフラッシュ音が鳴る。


「よし、じゃあ交番行こうね」

「お、おう……。良いのかよ、こんなとこで」

「こういう時の為の魔法少女の身分だからね。この魔力そのものが私達の身分証明になるし」


 言って、右手から紅を立ち昇らせる。


「あの状態で攻撃されたら、木っ端微塵だろうから気を付けてね」

「しませんよ!!」


 ファルフジウムによる余計な一言のせいで、数歩後退りされる。


「……ま、(ブラック)ジョークも程々にして、さっさと行こう。――ここから西に150mくらいに交番あったし」


 マギホンで周辺地図を確認しながら、ファルフジウムは歩き出した。

 健斗の背を軽く押しながら、ガルライディアも動き出そうと――


「待ってくれ……!」


 突然背後から呼び止められ、踏み出しかけた足を元に戻す。

 見ると20代半ばのスーツの男性、恐らく仕事帰りの者だ。


「何ですか? もしかして彼のお知り合いですか?」

「そういう訳で無く、写真貰っても?!」

「――魔法局HPをご覧下さい」


 全くもって空気の読めないお願いを即時切り捨てて、駆け足気味に二人の元へ。


 けれども、それは拒まれた。

 男が腕を掴んでいた。


「忙しいので、ご遠慮ください」

「あの子供か? そんな事よりも税金払ってる俺らを優先すべきだろ」


 瞬間、空が軋んだ。

 紅の波動が辺りを駆け抜け、男の脚元を吹き抜ける。


「迷子の子供一人慮ることの出来ない人を優先しませんよ。緊急性がある方が先に決まっているでしょう?」


 肘から先を軽く一回転させて、男の手を振り払う。


「あの子のご両親は今頃探し回っていることでしょう。大切な人が行方不明だと、日が変わったとしても見つかるまで探すものですよ」

「親でもない癖に、どうしてそう言えるんだよ……!」

「――実体験ですから」


 ひくり、と引くに引けなくなりつつあった男の頬が僅かに動いた。

 目の前の少女の纏う雰囲気が一変したのだ。


「親友とでも言うべき友達が行方不明になって本当に日付が変わっても探し回りました。…………最終的に私を見つけ出した母に気絶するまで離してもらえませんでしたが」


 さて、と一旦言葉を置く。


「それでは、迷子の対処とネットに沢山転がる写真が増える事。どちらが優先すべきかは自明ですね?」


 これ以上は実力行使も辞さないと、魔力を軽く(・・)放って威圧する。

 一般人が出せる物理的出力を大きく飛び越えたそれは、対象の生存本能を呼び覚ますのには、十分だ。


「クソガキが……! ただじゃ置か」

「――せめてこの程度には反応しないと、変身していない状態の私相手でも無理ですね」


 瞬間的に踏み込んで、拳銃一丁を額に押し付ける。


「消えてください。時間の無駄です」

「――――!」


 男はすぐさま走り去り、騒ぎを聞きつけた警察官によって、健斗は無事(?)保護されたのだった。


 なお、一連の様子が動画としてネットの海に放流され、一部の人間がガルライディアを非難したが、子を持つ親達やガルライディアの過去に注目した者の話題に流されたのだった。



 _______________




「迎え来てた…………」


 少女は一人、無意識的に言葉を紡ぐ。

 就寝前のベッドの中、特に何かを考えていたわけでは無い。


「いいなぁ…………」


 夜更かしの悪い子は、瞼を閉じた。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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