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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
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年の瀬、重ねて Ⅰ

 12月半ば、最早凍える様な寒さが毎日のように続く中、魔法少女の仕事が舞い込んで来た。(シフト制なので、魔物が出ただけだが)


 葉を落としきった木々の間を飛び交う様に、狼型の魔物を追い込んでいくのは、本日のシフトのガルライディアとファルフジウム。


 紅の魔弾で退路を断ち、黄の剣閃を以て畳み掛ける。


 日が落ち切った暗闇を幾重にも照らす魔力。

 だが、それも終わりに近づいていた。


「『散弾ショット』! ファルフジウムさん……!」

「オッケイッ!」


 散弾で動きを鈍らせると同時に、ファルフジウムは変身用携帯(当人命名:キーフォン)を右脚のブーツのソケットに叩き込んだ。


 ――『Brave・Finish!』


 鳴り響く電子音。

 迸る閃光。


 それらと共に放たれたファルフジウムの一撃は、見事に魔物の命脈を砕いたのだった。


 死骸は兎も角として、出来るなら魔石を先に取り出して欲しいという通達もあって、『フォルテカリバーン』で心臓部を切り裂いて、魔石を取り出す。


「……ファルフジウムさん、ちょっと剣と魔石そのままの位置で」


 ガルライディアが魔法を展開して、水で付着した血を軽く流す。


 その後、専用に用意された袋に魔石を入れる。

 後日袋ごと魔法局支部に提出する予定だ。


 魔法局に戻ろうと、脚に魔力を込めたガルライディアの肩をファルフジウムが軽く叩く。


「ちょっと寄り道していかない?」


 と。



 _______________




「うわぁ…………」


 結は思わず感嘆の声をあげていた。


 街中を照らすイルミネーション。クリスマスが近いこともあって、それらはカラフルに街を彩っている。


「凄いね。……でも、電気代は気になるよね?」

「昔千葉とかにあったテーマパークとやらはどうなっちゃうんですか? これで電気代気にし出したら」

「恐怖だね……」


 魔物の出現に伴って、主に都市部を中心に結界を張った為に、郊外にあった大規模施設はかなりの数が放置された。

 それらも30年の月日で、経年劣化と魔物同士の闘争によって破壊され尽くしている。


 街の外周部の殆どが森と化している現状がそれを物語ってもいる。

 それには、魔力適合した結果、植物の生育速度が上がった事も大きく関わってはいるが。


「――まあ、何にせよ、ちょっとだけ歩こっか」

「……はい。悪い事してる気分です」


 色とりどりのライトに照らされた街を並んで歩く。

 まだ夜も然程更けていないのもあって、結構数の人とすれ違う。


 なお、二人の現状を警察官に見つかった場合、即補導ものだ。


「ある意味仕事中だから、悪い事ではあるんだよ? その背徳感が良いと思わない?」

「思えません」

「真面目だなぁ、結っちは。良い事だし、私がダメダメなんだけど」


 結の頭の中は、ある事で埋まり尽くしていた。

 それ即ち、香織(母親)にバレたらどうしよう? と。


 そうこうしている内に、曲がるべき交差点へと突入した。


「…………この景色を私達が守ってるんだって、考えるとさ、また頑張ろうって思えるんだ。魔法少女になった理由は違うんだけどね」

「なんとなく分かります。満足感って言うか…………」

「そうそう、そんな感じの!」


 充足感、誇り。

 ほんの少しだろうと、それらが彼女らに力を貸してくれる。


「……ちょっぴり、全く違う理由で戦うの、罪悪感が――あだっ」

「――ふぐっ……!」


 軽い調子で心の内を吐露しだした美勇の腹部にあるものがめり込んだ。

 それはぶつかった衝撃で尻餅をついた。


 防寒着に身を包んだ男児。

 年齢は10に満たず、頭髪がボサボサだ。


「……大丈夫? どこか痛い?」

「痛く無い。…‥姉ちゃん、誰?」

「私は結。君は?」

「健斗」


 口調からヤンチャっ子が想起させられるその少年――健斗に事情を聞いてみると、どうやら母親と逸れたらしい。

 イルミネーションを見る為と、明日が土曜日であり、偶の夜更かしのお供(菓子)を買いに母親と出かけたは良いものの、ものの見事に逸れたとの事。


「一旦交番かな?」

「それが良いでしょうね。…………ただ」


 一時腹部への衝撃で悶たり、歳上の女子の腹部に顔面から衝突した事実を突きつけられて頬を染めた健斗を揶揄ったりしていた美勇も復活して、真っ当な提案をする。


 だが、それは少し難しい。

 彼女らが真っ当とは言い難いが為に。


「私達ごと交番行きですよ。このままだと」

「…………うん。確かに」


 未成年が夜10時を過ぎた状態で、交番に幼子を連れていくのだ。

 はっきり言って面倒ごとが起こる。


「しょうがないですね。美勇さん、携帯(・・)出して下さい」

「――あ! それがあったね」


 携帯の部分を強調された事で、美勇も安全で確実な方法に思い至った。

 いそいそと鞄から必要物を取り出す。


「健斗君、今からの事とか私達の名前秘密ね?」

「……? 分かった」


 何となしに頭を軽く撫でてから結は、ブレスレットに魔力を込めた。


「『変身』」

「『極光チェンジ』」

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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