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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
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彼女が加集になった日

「お父さん、お母さん、結婚記念日おめでとう」


 結は、今年で13回目となる12月5日の加集夫婦結婚記念日の祝いの場(本人ら主催)にて、豪華な夕飯を前にして、プレゼントを手渡した。


 今までの貰っていた小遣いをどうこうするのでは無く、完全に自身で稼いだ金銭での初のプレゼントとなった。


「ありがとう。開けさせてもらうわ」


 中身は、ワインオープナー。

 香織も、共に買い物に出掛けた昌継も、その中身までは知り得なかった。

 だからこそ、彼らは少しばかり目を見開いた。


「……あら? ちょうど良いわね。使いやすそうね、ありがとう」

「先にワインとグラスを買うって言ったから何だろうけど、良い物を貰ったね」


 加集家にだって、元々オープナー位はある。

 けれどもそれは割と力のいる物であるため、夫婦は素直に喜んだ。


 夫婦揃って元々の物でも特に苦労せず開けられはするが、それは言わぬが花である。


 早速結からのオープナーを用いて、昌継が用意した赤ワインを開ける。


 それをグラスに注いで、各自飲み物を手に取る。(なお、結の分はブドウジュースだ)


「「「乾杯」」」


 細やかながらも温かな祝いの席が幕を開けた。



 _______________




 結が夢の中に堕ちた後に、昌継は些か緩くなったワイン片手に、家に今日から鎮座し出したものに腰掛け、肘置き横のスイッチを押した。


「……おぉ」


 背後から全身各部を揉み解すそれに微かな感嘆の声を漏らす。


「ーーどう? 心地は」

「凄い良いね。まさかマッサージチョアを用意してくれるとは思わなかったよ」


 昔から変わらず足音を立てずに(・・・・・・・)近づいてきた香織が結婚記念として購入したのは、マッサージチェアだった。


 ここまで気分が良いとは……と自身が歳を取ったことを実感しながら昌継は変わらず微笑む。


 香織もチェアの真横程まで来て、けれど何を話すでも無く、隣の夫を見つめている。


「…………ねぇ、昌継さん」

「何だい?」

「もう、13年経ったのね」


 その声音は感慨深く、懐かしく、けれども苦々しい何かを孕んでいた。


「そう、だね……。でも、まだ13年さ。あの日の誓いはまだまだ続くよ」

「…………」


 ーー例え何があろうと、君のそばにいる。一生涯、君の一番近くで支え続ける。


 昌継からのプロポーズ(誓い)

 香織の壊れかけていた(・・・・・・・)心を段々と埋めていった。


 恋人の心を救う言葉。

 気を伺っていた昌継には、だが、その時以外の選択など無かった。


「ーー私、そろそろ戻るわ」

「………………うん」


 それは二人の間にのみ通じる言葉。


 乗り越えた様でいて目を逸らしていた過去との清算が待っている。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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