新たな仲間 Ⅱ
硬質な金属同士が互いに牙を剥き、衝撃が訓練室を伝播する。
「まだまだ動けるでしょう? 全力で来なさい。生憎とそう簡単に死ぬ様には出来てないので」
「――ッ。なら――――!」
無造作に掲げられた小太刀一振りで、直剣の一撃を難なく受け止める。
受け止められた反作用をも利用して、即時構えて、魔力の刃を放つ。
けれども、それは纏っただけの純白の魔力に拒まれ容易に砕け散る。
『Brave・Blade!』
響く電子音。
纏い膨れ上がる魔力。
振おうとした瞬間、眼前に現れる白亜の障壁。
それごと押し切ろうと更に魔力を剣に込めた。
「カウンター対策はしておくべきかと」
「――ガッ…………!」
剣が振るわれる直前に、少女は腹部に鈍い衝撃を受ける。
ただの蹴り一つで少女の身体を軽々と数m吹き飛ばす。
息が詰まり、満足に受け身も取れない。
そんな状態を相手が放っておく訳が無い。
即時、加速して起きあがろうとしていた所に刃を突き付ける。
これにて、チェックメイトだ。
「……流石に何年も戦ってきただけはありますね。総評は皆の所で。立てますか?」
「うぇ…………。お腹は駄目っすよ」
文句を垂れながらも少女は差し出された手を支えに立ち上がる。
頻りに腹部を摩っているあたり、中々痛みが引かないようだ。
訓練室のすぐ近くにあるミーティングルームにて観戦していた他三名に合流する。
「二人とも、お疲れ様。互いに全力で無いとは言え結構見応えあったわ」
労いながら、ペットボトル飲料をそれぞれに投げ渡す。
妹分の戦いに満足げな明によって渡されたペットボトルを開けながら、グラジオラスは二つの椅子を引いて、片方に座った。
一口ボトルを傾けて変身を解いてから、対戦相手であったファルフジウムに着席を促す。
彼女も変身を解いてグラジオラスの横に腰掛けた。
横から二人に結がタオルを渡す。今度は手渡しだ。扱い方の違いが如実に表れている。
「まず、結論から。総評としては"悪くない"ですね。特に単純な事態への対応速度などは目を見張るものがあります」
守美子が美勇の目の前に障壁を展開した際、美勇は一瞬の躊躇も無しに、魔力の追加を決断した。
魔力特性による燃費の良さなどにも支えられた行為ではあるが、その判断――思い切りの良さ――は十分武器となる。
だが――
「知性の低い魔物ばかりを相手取っていたからでしょうが、搦手に弱いですね。本来そこは段々とランクが上がるにつれて学んでいく領域ですが、今の私達にとっては致命的です」
「ラウムと魔人同盟…………!」
守美子の障壁による視覚の妨害からの蹴りをもろに受けてしまった点からもそこは一切の否定材料が無い。
そして、それは人と同等以上の知性を持つ者との戦いに於いては、守美子の言う通り致命的も良いところだ。
件の敵は、鳴音が悔しげに漏らしたラウムと魔人同盟の面々。
現状分かっているのは、ラウム、ヒュアツィンテ、ツヴァイの三名。
同盟と言っているのだから、この三人で打ち止めになるとは思われない。
と言うよりも確実に他にもいる。
それらは彼女達の住む街を中心に攻撃を仕掛けている。(他地域では然程確認されていない)
これからもそうなりそうなのは、魔法少女達の総意だ。
よって、美勇には可及的速やかに対人戦闘の経験を積ませる必要がある。
勿論、経験の薄い結や鳴音も並列して積むことになるが。
「…………その件で、少し良い……?」
控え目に、けれど強い意志を瞳に宿らせて、鳴音はある事を切り出した。
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