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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
黒か花か

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黒花 Ⅰ

 一度大きな魔力を感知した地点に向かったガルライディア及びグラジオラス。


 だが、彼女らはその地点に着いても特に収穫を得られなかった。

 純粋に、捜索している二人の感知能力の問題であった。

 当人達も、ここまで感知能力の低さで苦労するとは思っていなかった。

 魔法を用いた戦闘が行われたらしき部分には魔力が残留していたが、それ以降の方向がまるで追えない。

 魔物はかってに魔力を振りまくのに対して、明程の制御能力だと本当に放出が零なのだ。


 残っているのは、セージゲイズ(あかり)と戦闘したらしい者の魔力だけ。

 これを一旦追うことに決めた二人は早速出発しようとしていた。


 しかし、ここで連絡が来た。

 それは、電話だった。

 ガルライディア、グラジオラスの両名は急いでいるのも相まって、名前をロクに確認せずに出た。


『ガルライディア、グラジオラス。今街の近郊北西部約2kmのあたりで大規模な魔力が確認されているのだけど、それは把握しているかしら?』

「はい、今からその方向に向かう予定でした」


 電話の主は清水 創美つぐみ、魔法少女直属の上司であった。

 彼女が伝えた場所は、丁度魔力がそちらに向かって伸びているのもあって、恐らく一致すると思われる。


 しかし、とっくに帰宅しているはずの創美がどうして現状を把握できているのか?

 それに関する情報は、当人からすぐにもたらされた。


「重畳。何箇所も同時に魔力が膨れ上がって(・・・・・・・・・)何事かと飛び起きたのだけれど、そっちが現状を理解しているのなら、問題ないわね」

「――?! 清水さんは元魔法少女・・・・・なんですか……?!」


 ガルライディアが思わず叫んだ。

 創美は魔力を感知したと言った。それは魔法少女特有の感覚であるために、少なくとも創美は以前魔法少女であったはずであることになる。


『あら、言ってなかったかしら? それは事実ではあるけれど、かなり鈍っているから戦力的には期待しないで欲しいわね。……まあ、短時間なら街の外からの魔物の襲来はなんとか出来るから、外の事に集中しなさい』

「私も初耳でした。ですが、それなら承りました。街の事、宜しくお願いします」


 満足気に頷く音が微かに聞こえて、そのまま電話は切れた。

 二人は、顔を見合わせることもせずに、魔力放出で一気に加速した。



「……第一世代が聞いて呆れるわね。鍛え直そうかしら?」


 無力感に苛まれて、後輩を巻き込んでの再度のトレーニングを画策し始めた創美は、寝間着から着替えて、魔法局の仕事部屋へと向かう。

 魔法局は街の中心部にあり、魔力の感知性能も鈍った己の感覚よりも信頼できる。

 サービス残業も良いところだが、致し方ない。


 ため息一つ、彼女は戦士の顔つきとなった。



 ________________




 黄の閃光が、ラウムに迫る。

 それは、空間遮断に阻まれる。


 けれども、閃光は少しずつ空間を隔てている魔法から魔力を奪っていく。


「ほう……」


 ラウムは僅かに感嘆をあげながら、後退する。

 その隙きに、閃光を放った者ともう一人は、エレクのすぐ近くに降り立った。


 魔力を魔法術式から奪う魔法は、流石のラウムも初めて見た。

 他者との物理的接触による魔力の強奪などは割と存在するが、魔法術式から奪うのは珍しいにも程がある。


 興味が湧いた。

 空間を歪めて、5回衝撃波を放つ。


「『愚者の剣(ノンブレイクブレイド)』」


 魔力弾を4つ放ち、残りの真正面から飛んできた衝撃波を魔力の剣で切り裂いて、無力化する。

 セージゲイズが扱える『炎剣バーニング・エッジ』のアレンジ版の魔法。

 切った存在の魔力や意識のみを削る不殺の剣。


 殺す覚悟を持たない剣。それは正しく愚者のそれだ。


「そんなのあるんだったら、さっき使えばよかったのに」

「どっかの誰かの纏ってた魔力じゃ砕けるだけなのよね」


 セージゲイズに並び立つはファルフジウム。

 少女らは、エレクを庇うように前に立つ。


 エレクは何一つ言葉を発しない。発せない。


「「『起源魔法オリジン・マギカ』」」


 先程まで戦っていた二人の息が完全に一致する。

 彼女らのここからの戦いは、大切な者を救うために。


「『悉皆明かす愚者の智慧エリュシデーション・ワイズ』」


「『不撓不屈即ち勇気の証(ライジング・ブレイブ)』」


 仄かな光が瞳を包む。

 爆発的な黄煌がその身を覆う。


 目の前の敵を倒す。

 今すべきことは、それだけだ。


「――くく、ッハハハ――――、その魔力、興味深いぞ! 使う魔力に応じて、周囲から魔力を奪っていくな。それともう一つも中々だ。魔眼の擬似的再現とは……!」


 大口を開けて、心底愉快そうに嗤う。

 けれど、その魔力は暴力的な悍ましさを孕んだままだ。


「――遊んでやろう」


 壮絶な笑みを浮かべて、ラウムは遊びと称した実験を開始した。

 空間が軋み、不協和音を生じさせる。


 発生する衝撃波を迎撃していく。

 セージゲイズ、ファルフジウム両名で対処に当たる。

 決して後ろには行かないように。


「…………どうして――――」


 大気が炸裂するような音に紛れたエレクの声は、当然の如く掻き消えた。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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