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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
黒か花か

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再開&問答 Ⅲ

 嘗ての友のそんな様子に対して、ヒュアツィンテがとうとう動き出す。

 言い表しようの無い感情をぶつけるように、思い切り頭上で保持されていた槍を振り下ろしにかかる。


「ふっ…………!」


『フライクーゲル』二丁の引き金を同時に引き絞る。

 ついでに、反動の方向に腕を自ら引っ張る。


 激発と共に、槍を跳ね上げて、互いが腕を頭上に上げたままの一瞬に、グラジオラスが攻勢に出る。


 一振りのみの『唐菖蒲』を両手でしっかりと構えて、突きを放つ。

 純白の魔力で強化されていたそれも、ヒュアツィンテが半ば無意識的に纏っている魔力で大きく減衰せざるを得ない。


「――ラッ!」


 ーーなので、押し込む。

 阻まれ、勢いを失った『唐菖蒲』を魔力放出で強引に押し出す。


 咄嗟に身を捻ったヒュアツィンテの脇腹には、しかし、一本の赤い筋が刻まれた。


(血は赤と。……性能が高いだけで、人型生物からは逸脱していないのでしょうね)


 グラジオラスは極めて冷静に斬撃を重ねる。

 速度を魔力放出で弄り、変幻自在の剣戟とする。


「――しつ、こいわね…………!」


 跳ね上げられた腕はとっくに引き戻してはいるものの、ヒュアツィンテの槍術足り得ない槍捌きでは、間合いを詰められた現状はどうしようも無い。


 段々と回転が遅れ、攻撃を貰う事が増えてきた。


 ガキリ、と一際強くグラジオラスが槍を打つ。

 その衝撃に思わず体勢を崩す。


 そこを虎視眈々と狙っていた者が一人。否、二人(・・)


「『衝撃インパクト』」

「……シッ…………!」


 前後から挟むように放たれた魔弾と斬撃。

 それに対して、ヒュアツィンテは苦々しげに口元を歪めた。


 瞬間、血色が渦を巻く。

 完璧に入ったと判断した瞬間の出来事に、魔法少女達の動きは止まった。


 それは、血の如き赤で細長い物が蟠を巻いている状態だった。

 それが、ヒュアツィンテの全身を覆い、魔法少女達の攻撃を防御してみせた。


「……まさか、あれは槍が…………?!」

「――え……?」


 動揺からグラジオラスの思考の一部が漏れ出す。けれども、それだけでは要領を得ない。

 ガルライディアも何を言っているのか分からなかったが、次第に理解し始めた。


「槍ってこんなに曲がって大丈夫な物じゃ無いよね?」

「当たり前よ。だとすると、恐らくあれは――――」


 グラジオラスが核心的部分に言及する寸前で、血の防御が解かれた。

 明らかに可笑しい程に曲がり伸びていた槍が、元の長さ、元の形を取り戻す。


「――ハッ…………ハァッ……」


 そこには、何故か消耗しているヒュアツィンテの姿があった。


 グラジオラスがそれを好奇と見て、攻撃を再開しようと脚を踏み出した。


「――――チィッ…………!」


 ヒュアツィンテが舌打ちと裂帛の気合いをない混ぜにして、魔力で周囲一帯を叩く。


 彼女を中心にした一瞬の暴風は、グラジオラスはおろか、ガルライディアでさえも、容易に弾き、数m後退させた。


 ぐっ、と足に力を込めて、ヒュアツィンテは地を蹴る。

 魔法少女達の攻撃が届かないように、上空に躍り出る。


 ばさり、と彼女の背からが生える。

 強く空を打ち、彼女は一瞬の内に、遥か遠くへと飛んでいく。


「……逃げた…………?」

「恐らくね。何が原因かは定かではないけれど」


 事態を飲み込むのに数秒かかったが、魔法少女達はそれどころではないと思考を切り上げて、まずはセージゲイズの下へと向かって、走り出した。


 既に、そこにはセージゲイズはいないと言うのに。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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