再会&問答 Ⅰ
当番だったガルライディアとグラジオラスは、明からのメールを受け、眺野家から離れた場所から順に街中を探し回っていた。
『グラジオラスさん、手掛かりとか無いっ?』
『流石にあったら伝えてるわよ。エレクの魔力が感知出来ないのだから、脚で探すしか無いわ。ひたすら動くわよ!』
『――う、うんっ』
魔力が一切感じられない事は不審でしか無いが、取れる手段は限られている。
魔法少女の姿で、民家の屋根や壁を伝って兎に角出鱈目に探す。
けれども、街の半分以上を確認した時点でも、手掛かり一つ無かった。
『明さんからの情報来てないよね?』
『ええ、微かに明の魔力と覚えの無い別の魔力を感じたから、恐らく余裕が無いのでしょうね』
『――ちょっ、すぐに行かな』
『――警報が鳴っていないのだから、魔物じゃないわよ。だとすると、答えは一つね』
魔物出現の警報は街中での出現によって、マギホンのそれは、街へと魔物の接近と出現によって、作動する。
それが無かったのだ。
グラジオラスが、答えは一つと言うのも頷ける。
『ファルフジウムさんかな?』
『ええ。その可能性が一番高いわ。ついでにガルライディアやセージゲイズの話から総合的に考えると、セージゲイズが負けることは早々無いわ』
魔力制御が上手い事の最大の利点は、魔力消費の軽減だ。
魔法発動の際の無駄を無くし、最適化すると言ったレベルにまで達した魔力制御は、ファルフジウムが持ち得ていないのは確認済みだ。
そして、セージゲイズはその更に先。
魔力の無駄を削ぎ落とし、加えて相手に有効的となる火力ぴったりに量を調節する。
そんな事が可能なセージゲイズは、実質的な魔力量に於いて、街一番である。
(単純な量的な話なら、エレク>グラジオラス>セージゲイズ>ガルライディアの順)
その次元にいるセージゲイズを下せる者など、そうはいない。
だからこそ、放置して鳴音を探すのをグラジオラスは優先するつもりなのだ。
信頼しているからこその扱いの雑さである。
兎も角、出来る限り、探し続けよう。
そうグラジオラスが言おうとした瞬間、それは放たれた。
『『――――?!』』
揃って『念話』上で、息を呑む。
圧倒的で、暴風のような魔力。
『グラジオラスさん、……魔人が現れた時って、警報鳴ったっけ…………?』
『…………鳴っていない』
『そう、だよね……。ごめん、行ってくる』
言うが早いか。
ガルライディアは、その場から魔力放出で一気に加速して、今なお主張を続ける魔力目掛けて、走り始めた。
『待てとは言わないけれど、私も行くわ!』
『……ちょっとだけ時間貰っていい?』
グラジオラスの声への返答は無く、あるのは曖昧な確認だけ。
『ちょっと話す時間が欲しいんだ』
『……彼女、なのね?』
こくり、と頷いたのが見えていなくとも、グラジオラスには手に取るように分かった。
しばし無言の時間が流れ、けれどそれも長くは続かない。
目的地に着いたのだ。
「…………やっと来たのね」
ワインレッドのドレスを纏い、血色の槍を携えた少女。
人呼んで、魔人ヒュアツィンテ。
魔法少女を殺すと言った者が、そこにはいた。
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