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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
黒か花か

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花々 Ⅱ

「ハアッ!」

「――ったく、重いなぁ……!」


 セージゲイズは本を片手に、体重や運動エネルギーを思い切り乗せて、振り下ろす。

 ファルフジウムは、直剣の腹に左手を置いて、辛くも受け止める。


 ギリギリと音を立てて、魔力を散らしながら、均衡状態に(もつ)れ込む。


 けれど、動作が止まっていても戦闘が止まっているわけでは無い。


(魔力特性『累加』……使われる魔力量に応じた倍率で周囲の魔力を取り込んで、増幅させる、か。どうりで魔力量の辻褄が合わない訳ね)


魔を垣間見る(スペル・スコープ)』でファルフジウムの魔力を解析し、セージゲイズは人知れず嘆息する。


 例えるならば、他の特性の魔力なら100の魔力を使うのに、100の消費がいるが、『累加』は90の魔力を消費する際に、周囲から10の魔力を付け足すのだ。


 安定した魔力を高燃費で扱える。

 かなり厄介だ。


 特にセージゲイズのように、決め手に欠ける者にとっては。

 厳密には、殺さないで無力化する時の決め手が無いのだが。

 炎の火力は一長一短なのだ。


 総じて、厄介。及び持久戦は不利。また、不測の事態に備えて消耗は少なくしたい。

 セージゲイズは、速攻をかけることを決意。


 魔力弾を放ちながら、距離を詰める。


(魔力制御が凄過ぎる。全然減らない。お互いにまだ抑え目だから何とかなってるけど、魔力量も負けてるしなぁ……。私の場合は足留めしなきゃだけど、鳴音が長くなる(・・・・)って言ってたんだよね)


 ファルフジウムは、迫る魔力弾を回避しながら、今後について考えを巡らせる。


 持久戦は得意分野ではあるものの、流石に専門家には魔力量と制御で負けていて、魔力切れはファルフジウムの方が先に起こる。


 結論を言うならば、対峙する幼馴染み二人は、互いに行動方針を速攻にした。


 魔力弾に紛れて接近するセージゲイズ。

 本を振りかぶり、横薙ぎ気味に放つ予定な事が見て取れる。

 ファルフジウムは、予測し得る軌道に剣を置く。


 ファルフジウムの行動は軽率なようにも思えるが、魔法少女の戦闘速度ははっきり言って軍人のそれとも比較にならない。


 常時身体強化(思考速度含む)を使っているのだ。

 簡単に人間の限界を越えられる存在のそれが、ただの人に負ける訳が無い。


 だからこそ、ファルフジウムの判断は正しいのだ。一般的には(・・・・・)


 だが、セージゲイズは一般的な魔法少女では無い。

 本を振りかぶる手とは逆の手の人差し指に、極小の炎を展開、及び魔力を込めて、ファルフジウムの視界を一旦遮る。


 セージゲイズは、ファルフジウムの左側に魔力を展開し、それを囮とする。

 ファルフジウムは、一瞬囮に気を取られ、けれども逆の右側に向かい剣を振るう。


 ガキリと魔力が軋みを上げた。


(……防いだ)


 ファルフジウムの思考に、ほんの少しの油断が生じる。

 けれども、それこそがセージゲイズの狙いだ。


「――グフッ……」


 瞬間、彼女の背を衝撃が強かに打ち据えた。

 前に押される身体。

 それを他所に、ファルフジウムは自身の身に起こった事を正確に認識していた。


 囮だと思われた魔力は、そうでは無く、ただの攻撃手段だったのだ。


 視界を遮られたファルフジウムが魔力感知に頼るのは、当たり前だ。

 なら、その当たり前を突けば良い。


 セージゲイズは、囮用の魔力の制御をすぐには手放さずに、囮として機能しなかった際に背後からの攻撃を画策したのだ。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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