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【六章】収束の魔法少女 ガルライディア  作者: 月 位相
黒か花か

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黒 Ⅰ

 ――我が愛娘(・・・・)、ダイナ、今から示す場所に来い。


 空虚に感じられる女性の声、それが少女の恐怖を呼び起こす(・・・・・)


 過去に喪った仲間達。

 今失うかもしれない家族達。


 脳内を数多の死体が埋め尽くす。


 屍山血河を踏みしめて、黒金の女は冷酷に嗤う。


(――例え、死んだとしても…………)


「私が殺す…………!」


 少女は一人、殺意を練る。

 既に、家族を裏切る形で、外に出てきた。

 友に酷いお願い(・・・・・・・)をしてきた。


 最早、後戻りは出来ない。する気もない。


 満開の花畑に蔓延る害虫らしく、同じ蟲を殺す。


 街を出て、指定された場所へと向かう。

 そこには濃密な魔力が漂い、殺人的な圧力を孕んでいる。


 けれど、少女は一切気にする素振りもなしに、脚を踏み出す。

 少女の瞳には紫電が宿り、頭髪も所々が青紫に変色している。


 脚を踏み出した瞬間、少女は悟った。

 囲われた(・・・・)


 少女を含む半径1km程を覆う大規模結界魔法。

『空間』の魔力による空間断絶式結界、それを打ち破れる者は現状の魔法少女にはろくにいない。

 これから成長したら、まだ可能性が無いわけではないが。


 この規模の空間干渉魔法の維持は、流石の最強の魔族(・・・・・)でもそう長くは続かない。

 そこが勝利の鍵となるだろう。


「――来たか」

「……………………」


 そこに佇んでいた金髪の女が顔を上げた。

 一切の感情の伴わぬ視線が、少女を貫く。


「どうだ、人間に生まれ変わって、生きていた感想は?」

「…………魔族と何ら変わらない。当たり前だろう」


 ――そうか……。

 女は言葉を口の中で転がして、魔力を滾らせる。


 黒金の魔力が爆発的に周囲に広がる。


 少女もそれに倣う。


「『彼方まで轟け』」


 黒紫の紫電が零れ落ちる。

 その金髪は目の前の女と良く似ている。


 金髪の一部は青紫色に染まり、瞳は同色に染まりきっている。

 黒衣がバサリと空を打つ。


「エレクトロキュート・イグジスタント。…………お前を殺す」


 魔法少女とは決して名乗らない。

 自身は花では無いのだから。


 両者の必殺が最初から牙を剥く。


 音の無い空間干渉と結界外に音が届かぬ(・・・・・・・・・)紫電がぶつかりあった。

お読み頂きありがとうございます。

今後も読んでくださると幸いです。

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