友の様子
「グラジオラスさんは、どう思う? エレクさんの事」
「どうと言われてもね、原因が分からないと……」
先日、明からあるメールが送られてきた。
業務連絡が多い彼女にしては珍しいプライベートの内容だった。
曰く、一度倒れて以降エレクの様子が明らかにおかしくなったとの事。
具体的には、目を合わせない(元々明以外とはあまり合わせないが)、偶に別言語らしきもので、独り言のように何かを呟いていたりなどだ。
鳴音は英語は出来なくは無いが、それ以外の外国語は分からない筈であるために、かなり不審である。
「取り敢えず私達に出来ることは、原因が何であれ受け入れる事よ。……まあ、その前に此奴を倒さなければだけど」
「……そう、だね…………」
雑談もそこそこに、グラジオラスは防御や回避であしらっていた所から、攻撃に移った。
白刃が夜闇に負けぬ輝きを纏って、縦横無尽に空を翔る。
秒間六連に及ぶ斬撃の嵐から、思い切り後退することで、辛くも逃れた魔物だったが、姿が四足歩行型であった為に着地してすぐには動けなかった。
四足歩行の動物は骨格上前進は得意でも、後進は難しい。
そこを突く紅の閃光。
瞬く間に擊ち払われた魔弾群は、魔物に決定打を与えられない代わりに、魔物の足止めに成功していた。
「『白縛鎖』。……ガルライディア、悩むのは駄目とは言わないけれど、貴方が悩んでも決着はしないのよ? それよりもそれ以外で助けてあげる方が良いと思うわ」
「そうかな……? 『貫通』」
足の止まった魔物を地面に縛り付け、単純殺害性能最強の魔弾で屠る。
残響が夜の静寂に木霊して、魔物の唸りも同時に途絶えた。
日常会話を交えながらの討伐となっていることから、最早魔物討伐でさえ、ガルライディアの、彼女らの日常と化している事が良くわかる。
魔物の脅威度にも勿論よるが。
「そう言えばさ、さっき受け入れるとか言ってたけど、どこまですぐに受け入れられる?」
「そうねぇ…………、人間じゃないとかでも別に危険性が無ければ……?」
「凄い簡単に言うね……!」
グラジオラス的には害がなければ、仲間が人でなくとも良いらしい。
ガルライディアとしても、仲間なら受け入れるつもりではあるが、グラジオラス程簡単でないだろう。
「と言うよりも、私達は既に人であって人か怪しい存在を知っているでしょう?」
「……魔人の事?」
ガルライディアが恐る恐る聞き返したが、言いたいことは正しい。
魔人は人型ではあるが、純粋なヒト科動物かと言われると多少怪しい面がある。
「この前、清水監督に聞いたのだけれどね、魔人ダイバーの魔力回路や身体自体に改造が施されたような形跡があったそうよ、それも魔法でしか出来ない方法での、ね」
「だから、エレクさんもそういうことかもって、事…………?」
「あの子が魔人かどうかは割合とどうでも良い気がするわ。戦友なのに違いはないわ」
少し自身の発言が恥ずかしかったのか、移動速度を上げるグラジオラス。
そんな様子が微笑ましく思えてガルライディアの口角は自然と上がった。
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「――うん、そっか。…………それが望みなら」
同刻、一人の人間が動き出した。
己の誓いを行動に移すために。
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