ゴスロリ・ハイテンション Ⅱ
「……結、あれ誰?」
陽子が耳元で聞いてきてはいても、結はどう答えれば良いのか分からなかった。
友人とは言い難い。
友人の友人?
考えた上で、結は最早思考放棄することにした。
「知り合いの人、かな……」
「はぁい、知り合いの人、蕗原 美勇だよ。結っちのお友だちってことでオッケー?」
小学生二人に比べて、美勇の方が10cm程身長は大きくはあるが、視線を合わせるレベルではない。
例えそのような状態でも、美勇は視線を合わせるために、少し膝を折るが。
「オッケーっす。春日部 陽子、結の少ない友人ってとこっすね」
「どうして少ないを強調したのっ?!」
陽子はイタズラを楽しむ子供のように、ようにと言うかそのものだが、にんまりと意地悪く笑みを深める。
これには結も黙ってはいられない。
声を荒げるが、陽子には少しも響かない。
響き方で言えば、100%中のn%(nを結の友人数とする)と言ったところか。
要は5%に満たない程に、響いていない。
「家の妹分はおろか、私や姉貴分もあんまり友達いないから、気にしなくても大丈夫だと思うよ……! 言ってて悲しくなるから止めようか」
「「はい…………」」
血涙を流しそうな勢いの年上の少女に、若干引きながら小学生二人は最速で了承した。
物悲しい事この上無い。
「あの、蕗原さん、それフィギアですか?」
「美勇で良いよ。後、フィギアで合ってるよ。昔から好きな奴が再販されてたから、ついね」
彼女の手にあるのは、休日の朝にやっているドラマ系のヒーロー物のキャラクターのフィギアだった。
今の時代、魔法少女アニメの方が人気ではあるが、他のヒーロー物が無い訳じゃない。
「ターゲット層男の子にした結果、主人公の職業が警察とかになりがち……とか聞いたことあります」
「……ああ、魔法少女とかよりも現実的だしな。警察の試験の倍率とか気になるの私だけか?」
「確かに、気にはなる」
※彼女達は、小学生です。
一般的な小学生では無いのでは? そう疑問に思いそうになるが、一応一般的な小学生だ。
結は逸般人だが。
その二人の様子を、心底嬉しそうに眺める者が一人。
「ふ、美勇さん、どうしたんですか?」
勿論の事、美勇である。
「ん……? 二人は言わないんだなって。魔法少女じゃないのか? とかさ」
それだけで何となく美勇が今まで言われてきた事が分かってしまう。
ジェンダーの問題が話題になりだした辺りで、魔獣が出現しだした為に、今でもそれら問題は大して進展がない。
「いえ、特には? ヒーローとかに限定しても、結局そう言うヒーロー物も魔法少女物とかとやってる事同じですし……、見てる番組が違うだけ、みたいな…………」
「正直な話、私はそっちの方が好きだしなぁ…………」
結の発言は、創作活動を行っている者に対してクリティカルになりうる真理である。
後、陽子はエフェクト盛々の魔法少女アニメが目に痛いために苦手である。
リアル魔法少女の結からすると、本人が紅の閃光を撃ちまくる為に、心にその言葉は思いの外簡単に突き刺さった。
実は戦い方は激しいが、一番視覚的に派手になりにくいのは、街の魔法少女の中だと、セージゲイズだったりする。
魔力光に色らしい色が無いために、まだマシである。
閑話休題。
「………………」
口元の緩みを抑えきれない者が一人。
「すっげぇニヤけてるぞ、あの人」
「理由は大体分かるから、言わないであげて」
ニヤけが抑えられない程度には嬉しかった美勇だったが、割と傷ついたので、口元は一文字になってしまった。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。
特撮は皆さんも見ましょう。
昔見たものとか非常に懐かしくなっておりますよ。




